2001年11月02日(金曜日)
269話 考えさせられる
日本に帰ってきてから
いっぱい考えさせられた
私たち日本人と、ドイツ人の間の
価値観の違いには愕然とするものがある
ドイツでは、みんな実によく、信号を守っていた
アウトバーンでは、ちょっとでも遅い車は、後ろから迫ってくる車に
当たり前のように、さっさと車線を譲る
トラックは、決して追い越し車線に入ってこようとしない
だから、速度無制限が実現できる
世界でも唯一の時速200kmオーバーが実現している
大人のドライバーとしての誇りをもって
ルールを守っているから
全部の人が、相手のことを考えるから
最低限のルールで、危険なくやって行ける
これこそ自由だ
街は、豪華ではないが
ゴミ一つ落ちていなく、それぞれの家は花を窓辺に飾り
よく手入れされていた
街の誇りを、一人一人が実現している
何度かのディナーでは、みんな奥さんを平気で連れてくる
そして少年までが参加してくる
そこでの子供は見事なものであった
参加している一人一人の大人に、礼儀正しく握手と挨拶をしに来る
中には、途中で立ち上がり
「今日のディナーに参加させてもらって、感謝します。」というような意味の
立派な長いスピーチをする少年もいた
父は母の誇りであり
妻は夫の誇りである
子は親の誇りであり
親は子の誇りである
隣人は、市民は、街の誇りであり
街は市民の誇りである
ディナーに参加している一人一人が不愉快な思いをしないように
そのためにマナーがある
みんなが気持ちよく食事できるように
食事のしぐさが、見事にキレイだ
自分の誇りを守るのと同様に、人の誇りを尊重する
人の誇りを尊重するから、人も自分の誇りを尊重してくれる
一見すると、堅苦しいと見える雰囲気が
実は
お互いがお互いを尊重しあっていて、実に心地よいものなのだ
ふと、そんなことに気が付く
我々が見慣れていない情景に出くわすごとに
感動し
その根拠が
いろいろな意味での“誇り”にある、と考えれば
簡単に理解できることに驚いた
私はドイツかぶれになったのか
そうかもしれない
しかし、帰ってきてからの
日本での情景には、やはり考えさせられてしまう
私がもともと一番嫌いであった風景
車の窓から、火がついたままのタバコをポイと捨てること
“火がついたままのタバコ”、つまり火事の原因になりうるものを捨てる行為と
自分の車の“灰皿が汚れる”ことを、天秤に掛けたとき
前者が勝つという価値観
言い方を変えれば
人の家が火事になる危険性があっても、自分の灰皿を汚したくない
という価値観
目の前の信号が黄色から赤に変わっても
突っ込んだ方が“得”だ、という価値観
横断歩道で、信号が黄色になっても走って渡りはじめる
しかも、幼い自分の子供の手を引っ張って!
幼い子供は幼稚園で、信号を守ろうと教えられている
その子の親が、そのルールを破って“見せる”
ルールなんか破ったって、早く渡ったほうが“得”だと教えてしまっている
子供の為になるわけが無い
目先の“得”の方が、ルールに優先する、という価値観
それを子供に対し、実際の行動によって教えてしまい
平然としている、親の価値観
人の大きな不快より
自分の目先の“得”を優先させる価値観
“日本は豊かではない”
そう思えて仕方なくなってしまった
私は
ドイツに行った最初のころ
ひどいコンプレックスに陥った
誇りを持って生きている彼らの価値観に対し
すばらしい
と、思ったのと同時に
自分が
どこから見ても日本人そのものであり
また、そう見られているのだろう、と思うと、ひどいコンプレックスに陥った
自分がイエローモンキー
黄色い猿に思えて、イヤで仕方なかった
イライラもした
でもそれは、1週間ドイツにいる間に解消した
この続きは、また明日
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