谷 好通コラム

2002年12月28日(土曜日)

603話 23歳の時の年末

今年も、とうとう年末がやって来た

 

18歳の時にガソリンスタンドに勤めて
今年が32回目の年末
しかし、店に出なくなってから、もう6年経つから
実際に年末のドタバタ劇を経験したのは26回

 

スタンド時代の年末には、色々思い出がある

 

23歳の時
ある中堅の路線トラック相手の石油販売会社で
本社給油所の所長をしていた

 

300坪程度の店で、約1000klの軽油とガソリン約200klを売っていた
当時としては、破格の出荷量
しかも年上のスタッフが多い中で
私なりに精一杯背筋を伸ばして務めていた
むしろ「無理をしていた」と言った方が正確だ
先輩社員を通り越して所長になったため、不服従の洗礼も浴びていた

 

今はそれ程でもなくなって来ているようだが
あの頃のスタンドの年末は本当に大変だった
いつもの倍以上の燃料販売量に
いつもはいくら勧めてもやってくれなかったオイル交換が集中し
いやというほどの洗車が加わる
配達も半月分ほどの量を3日間でこなす

 

大晦日を迎える頃には、気力も体力も限界
スタッフもクタクタになっている
何とかみんなに頑張ってもらうためにも
自分は店が開く朝7時から、閉店の夜10時まで、店に出ていた
自慢話ではなくて
そうしないとスタッフを掌握できなかっただけの話

 

大晦日を越せば三が日は休める
それだけを励みに頑張った

 

そしていよいよ大晦日
最後の力を振り絞って、みんなで頑張った
もうすでに、みんなの手は“アカギレ”でボロボロ
(私は手が異常に丈夫で、アカギレにはなったことがないが)
それでも、絆創膏などを張るものは一人もいない
長靴の中は水でズクズクになっていて
足はふやけきっていた

 

夜7時を回った頃
客足が途絶え始めた
(大晦日は、みんなテレビを見るので、客足が途絶えるのが早い)
それでもポツポツと客は入ってくるが

 

そろそろ終わった・・やっと
少しずつ照明を落とし始めた
みんながボツボツと道具を片付け始めた時

 

スタンドの2階
つまり本社事務所から怒鳴り声が飛んだ

 

「なんで片付けるんだ!年のケジメだろ~!
客が一人も来なくなるまで、店を閉めちゃイカンぞっ!」

 

その背広姿、路線営業の最高責任者、K部長の声だった
その顔は明らかに赤い
怒りの為の赤さではない
空けた2階の窓からは、酔っ払った営業の人たちの嬌声が聞こえた

 

誰もそれに応えなかった
しかし、みんなの道具を片付ける手は止まった

 

「ホラ、最後なんだから、早くきちんと片付けるよ!」
私は、腹の底から、渾身の大声でみんなに声を掛けた

 

バシャッ!と、2階の窓が閉められて
それ以上、2階からは声が掛からなかった

 

みんなで、黙々と後片付けをし
フィールドにたまった砂をきれいに洗い流して、しめ縄を飾ったのは夜9時過ぎ
2階はもうみんな帰って、電気もついていない

 

真っ暗になったスタンドの1階の事務所だけが明るい
みんなで袋菓子をつまみに酒を飲んだ
浴びるほど酒を飲んで
グデングデンのボロボロになって家に帰ったのは
紅白歌合戦が終わり
行く年来る年が始まった頃であった

 

正月明けてからの店のチームワークは、ウソのようにうまく行くようになった
ほんとにウソのように

 

26回の年末に、26通りの思い出がある

 

快洗隊に、今年も年末がやって来た
快洗隊の年末の忙しさは、かなり早くからやってきて
かなり激しくやってくる

 

全国から集まったうちの営業は
みんなと一緒に、年末の大忙しを満喫することを年中行事にしている

 

ありがたいことだ

 

私はといえば、事務所で31日までずうっと書き物をしている
店には来なくていいとみんなが言うのだ
私をいたわって、ではない
私は、店に出ると
すぐに、口を出したくなってしまうのだ
「君の磨き方は、チョッとおかしいよ。その手はもっとじっっくりと動かさなくては」
「スプレーでの洗い流しにチョッと時間をかけ過ぎだよ」
今日、ほんの30分ほど店を覗いただけで
もう、ブツブツ言い始めた

 

「あ~ッイカンイカン、俺、口出したくなっちゃうから、もう事務所に帰るわ」
そう言ったら、店長やみんなは嬉しそうな顔をした
わたしはもう、店に出してもらえそうにない

 

今日は、朝の出足が遅く10時過ぎからラッシュが始まり
夕方5時過ぎに客足が止まってしまった
年末もまだまだ序の口である

 

それでも、快洗Bossの威力か
1日売り上げのギネス、57.5万円の洗車であった
すごい!

 

 

開発者自ら、超硬ワックスを施工する図

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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