2003年03月30日(日曜日)
676話 売る側と買う側
“だけ”“でも”の話に関連して
「売る側」と「買う側」という話を
この話は、“だけ”“でも”の話の回答につながるもので
そして、かなり長くなる
売る側と買う側は、立場が違うのだから
当然、目的が違う
加えて、考えること、感じることが違う
しかし、物が売れるかどうか、買うかどうか
つまり売買の成立は
ほぼ100%買う側に決定権があるので
売る側は
買う側の考えていること、感じ方、欲求、価値観を
十分に理解しなければ
売買が成立することはない
つまり、買わないし、売れないということ
言い方を変えれば
「商品(物・サービス)が、売れるかどうかは」
「買う側の気持ち・価値観・都合次第」
「売る側の都合はまったく関係ない」
これが原則である
しかし、例外もある
その代表的なものが、「水道」「電気」「ガス」
文化的な生活をしていくのに最低限“必要な”物
使う量=買う量が多いかどうかは別にして
いやおうなしに買わなければならない
しかも、住んでいる所によって買い先まで決まっている
私の住んでいる所ならば、電気は「中電」、ガスは「東邦ガス」
水道はいずれにしても地元の水道局
「燃料」「車検」とか「医療」も
買わなければならない商品
買う側に、買わないと言う自由はない
ただしこれは、どこから、どのように買うのかという自由が買う側にある
具体的な話に絞る
「燃料」「車検」「オイル」「バッテリー」「ワイパー」などなど
車にとって必需品であるものは
買う側にとっては、多分に買わなきゃいけないものであって
「ガソリンは、入れなきゃ車が止まっちゃうから、給油する=買うもの」
ガソリンスタンドの取扱商品には
「買わなきゃいけないもの」が多い
私は、33年前=18歳のときからずっとガソリンスタンドに勤めていた
約20年前に独立したときも、ガソリンスタンドとしてであった
だから、その商売をやっていると
お客様に対して
「商品を売ること」が当たり前であると思ってきた
「お客様、オイルがだいぶ汚れてきていますので、
このままではエンジンに負担がかかり、寿命を縮めてしまいます。
そろそろオイルを変えなければなりませんが、どうでしょうか。」
「お客様、今、バッテリーの点検をさせていただきましたら、
かなり電圧が落ちてきています。そろそろ交換してやりませんと、
いつ突然エンジンが掛からなくなってしまうか分かりません。
交換しておきましょうか?」
「お客様、今、クーラーのガスの圧力を測りましたら、
かなり圧力が落ちています。暑さが本格的になる前にガスを補充しませんか。
この状態ですと、コンプレッサーオイルも減っているはずですので、
コンプレッサーが壊れる可能性もあります。
コンプレッサーの修理は10万円以上掛かりますので、
今のうちにやっとおいた方がお得ですよ。」
私たちは、お客様に対して
「壊れちゃいますから」「やらないといけませんから」などを
殺し文句にして
「売ってきた」
私たちは、車のメンテナンスを担う一つの業種として
お客様の車の安全のために
「やるべきです」「買うべきです」と言って
「売ってきた」
誇りを持って売ってきた
ただし、「壊れるはずがないもの」を、「壊れるから!」とか
「やらなくてもいい事」を、「やらなくてはいけない!」とか
売らんがための「ウソ」をついてまで
売ろうとした者もいて、それがバレタ時点で信用をガタ落ちにし
その店では、オイルも、バッテリーも、ワイパーも、タイヤも
お客様は何も買わなくなり
どうしても、ガソリンスタンドでしか売っていない「燃料」だけを買う
そんな人を増やしてしまったことも、事実だ
これはこれで、私も含めた業界全体として、深く反省すべきことだとも思っている
私の知り合いで
「近くのスタンドで、『バッテリーを今すぐ変えないと、
いつどこで止まるか分かりませんよ』って言われたんだけど・・・」と相談を受け
そのままで大丈夫と判断した
あれから2年経って、まだそのバッテリーで快調に走っているその知り合いは
「あの店だけには2度と行かない」と言っていた
信用を勝ち得るには長い時間が要るが、失うのは一瞬である
お客様の車に対して
適時かつ適切なアドバイスによる
良質な商品を
適切な価格による(他店より安い必要はない!適切な価格ならば)
適切な販売が
多くの顧客からの信用につながり
商売の決定的な生命線である“高いリピート率”の獲得となって
絶対的な利益を大きくするものである
これは、TDLの例を挙げるまでもない
私はそう信じてやってきたつもりだ
当然であるが
私たちはガソリンスタンドという仕事に誇りを持っている
「燃料の供給」という社会的な任務を持ち
「お客様の安全と、不自由のないカーライフを、支えている」という
そんな誇りを持ってやっていた
誇りを持って「売ってきた」
「やらなくてはなりません」というアドバイスの形で
主体的に働きかけることによって「売ってきた」
ところが、これは、商売としては非常に特殊なことのだ
一般的な商売(サービス業を含めて)では
商品とは、「売る側」が「売る」ものではなくて
「買う側」が、自分の意思で「買う」ものなのだ
「買う側」が、自分で「選んで」、「欲しい」と思ったものを、「買う」
だから、買う“必要はない”商品
例えば、カーコンポであり、超扁平タイヤであり、高級ホィールであり
今で言えばカーナビであり、エアロパーツであり
あくまでも買う側の嗜好によって買われる商品は
ガソリンスタンドにおいては、ほぼことごとく販売に失敗してきた
では、「洗車」はどうなのか
(「洗車」とは、車をきれいにすること全体を指す)
車のきれいさは
「買う側」の好みによって非常に広い幅を持つ
その広い幅を持つ洗車商品のうち
ガソリンスタンドでは
ある一定の幅の好みを持つ客層のためだけの商品を、取り扱ってきた
「汚れたから、しょうがないから洗う」
「車が汚いと気持ち悪いから、洗わないといけないから洗う」
そういう客層
この客層の、洗車に対する購買動機は
洗車を“必要商品”と考えている層なのではないだろうか
だから
「汚れが取れればいい」「とりあえず、きれいにしたい」
そんな客層とも言える
この客層の購買動機とは
オイル交換をする動機、車検を受ける動機、バッテリーを変える動機
つまり、「やらなければならないから」
これは、ガソリンスタンドが一番得意としている
「必要を売る」商売ではないか
それはそれでいい
そのような一部の「買う側」の動機に合った商品は商品として
商売としての意味が十分にある
ここまでは、「売る側」が「売る」で通用する
しかし
洗車に対する「買う側」の嗜好の幅は
ものすごく広く、深いのだ
その必要商品としてのスタンド洗車を
半分以上の人は「欲しい」とは思っていない
(消費者アンケートによれば)
その人たちは
車に対する感情、車に対する価値観、感性が
「洗車=必要商品」と考えている客層とは、明らかに違うのである
自分の車に対しての千差万別の嗜好、こだわり
「キチンときれいにしたい」
「丁寧に洗いたい」
「隅々まできれいにしたい」
「洗うだけではなく、キチンと磨いてやりたい」
「水垢が我慢できない」
「絶対に傷をつけたくない」
「機械に車を触らせたくない」
「普通のきれいさでは、私の車はかわいそうだ」
書き出せばきりがないほど
それほど、
「きれいさ」という人間の感性によってのみ測られる価値観とは
幅があり、種類があるものだ
では、そんな人たちに対して提供されている洗車商品が
今まであったのだろうか
「ほとんど無かった」
ワックスとか、コーティング剤とか
ユーザーが使うもの、道具としての商品は有ったが
サービスとしての商品は無かった
なぜ、無かったのだろうか
特になぜガソリンスタンドに無かったのだろうか
なぜ、「買う側」の幅広い欲求に「選ばれる」洗車が無かったのだろうか
ガソリンスタンドは、その元々の商売の性格が
「必要を売る」商売
特殊な商売であって
「買う側」の感性を考えて選ばれるべき商品を
作り出す商売ではなかったから
そう言えるのではないだろうか
「買う側」から選ばれる商品とは何かと
「買う側」の好みに、耳を澄まし、目を凝らす習慣が無かった
そう言えるのではないだろうか
では、どうすればいいのか
洗車に関しては
「商品(物・サービス)が、売れるかどうかは」
「買う側の気持ち・価値観・都合次第」
「売る側の都合はまったく関係ない」
この商売の原則を適用することである
洗車は、特殊な必要商品ではなく
ごく普通の商品・サービス商品なのだから
特殊なスタンドの商売習慣、都合にとらわれず
洗車に関しては
「商品(物・サービス)が、売れるかどうかは」
「買う側の気持ち・価値観・都合次第」
「売る側の都合はまったく関係ない」
この商売の原則を適用することである
では、具体的にはどうすればいいのか・・・
つづきは明日の、往復の飛行機の中で書く
今日は昼から夜まで掛かってここまで書いた
普段のコラムは
いつも勢いに乗って、いっぺんに書いてしまう
長くても1~2時間あれば大丈夫
しかし
今回の話は、キーパータイムスに載せる原稿の基にしようと
きちんと論理的な組み立てを考えながら書いた
こういう文章は、ものすごく時間が掛かる
そして、消耗する
しかも、いつもの仕事がある日には書けない
これだけは、いくつものことをやりながらの同時進行は無理なのだ
明日もがんばらなくては
今日も、最高のお天気で
刈谷、知立、両店とも好調
特に知立店は
15日からの営業で
とりあえず洗車売り上げ予算100万を、明日一日残してクリアし8万オーバー
月末で多分、洗車115万、洗車外25万ぐらいか
間違いなく、月200万をかなりオーバーのペースに乗っている
「買う側」に立った店作りが
やはり大切なことです
いっそう引き締めていかなくてはならない
本日の知立店
本日の春
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