2003年11月30日(日曜日)
844話 松永選手の場合
先々週であっただろうか
鈴鹿サーキットで「全日本GT選手権」の最終戦が行われた
そのレースには“松永まさひろ選手”が出場した
このレースのことを、なかなか書けなかったが
久し振りに何も無い休日が手に入ったので
大変遅ればせながら報告する
松永さんは、レースに出はじめたころ
MINEのSさんに、色々と世話になったということで
3年前、Sさんから紹介された
日本では非常に数少ないプロドライバーの一人だ
所属チームは「トムススピリッツ」
トヨタのファクトリーチームに順ずるチームで
スーパー耐久シリーズにも、「マジョーラ」のスポンサードで出場している
松永さんは、スーパー耐久では“監督”として参加
そう、あのもてぎ戦で
36番マジョーラアルテッツァにレース序盤でスリックタイヤを履かせ
2ストップ作戦で我が17番インテグラを交わして
見事クラス2位に導いたあの監督だ
・・・・作戦としての2ストップ
そう思っていたが
さっきトムススピリッツのホームページを見ていたら
http://www.tomsspirit.co.jp/
最初のピットインは“シフトレバー”が折れて
仕方なくのものであったようだ
しかも、1回目のピットインも2回目のそれも
私がスーパー耐久参戦記に書いた周回数にかなりの違いがあった
やはり記憶だけで書いていると
変な思い込みが入ってしまうのかもしれない、反省
いずれにしても
そのトラブルでのピットインにおいて
とっさにスリックタイヤに交換、2ストップ作戦にしてしまったことは事実だ
松永さんは、スーパー耐久では監督
そして、全日本GT選手権ではAドライバーとして出場している
GT選手権は、日本で一番人気のあるレース
鈴鹿線も、スーパー耐久とは桁外れの観客動員を見せていた
何万人と入っている
私たちの会社として
この鈴鹿戦に少しだけ、ほんの少しだけスポットでスポンサードした
レース当日、私たちは応援
ゆっくり行ったので
ものすごく遠い駐車場しかなく
延々1時間以上歩いてパドックまで行く
(パドック駐車券下さ~い)
松永さんは、いつもと変わらぬサービス精神満点の松永さんであった
もうすぐ決勝レースがはじまると言うのに
ニコニコと私たちの相手をしてくれた
ピットには、タレントの「三原順子さん」がご亭主の「コアラさん」と
一緒に来ていた
三原順子もどこかのチームの監督として参加しているらしい
松永さんは、昔、三原順子と結婚していた
どうやって知り合ったのか、結婚したのか
また、お別れしてしまったのか
一度も聞いたことがないので、私はまったく知らない
しかし、いずれにしても結婚していた元女房が現亭主と一緒に
自分の働いているところを訪問して
ニコニコと話しているのには正直言ってびっくりした
しかも、もうすぐ決勝レースがはじまるという時だ
左から三原順子さん、コアラさん、トムススピリッツの鈴木社長
(子供は、我社のお客さん長坂さんのお子さん)
GT500とGT300の二つのクラスで戦われるGT選手権
トムススピリッツは“GT300”クラスに出場する
下のクラスであるが
レベルはムチャクチャ高い
去年と、今年の直前のレースまで
「MR-S」で出場していたが、このレースから「セリカ」で出る
今、GT300クラスでは、この「セリカ」が一番強い
この鈴鹿戦は、そのセリカのシェイクダウンレースなのだ
セリカと言っても
GT300に出場するそのセリカは
市販のセリカとはまったく別物
どうですか?どこがセリカかさっぱり分からないでしょ
ボンネットの中央部のラインと屋根のラインが、かろうじて「セリカ」だ
車番は「17番」、奇しくもスーパー耐久17番インテグラと一緒だ
エンジン部はもっとすごい
セリカの“セ”の字も無い
性能的にはGT500クラスの「スープラ」に近いと言う
しかも!
なんとオリジナル「セリカ」は“FF”なのに、このGT300「セリカ」は“FR”になっている
ここまでくると“改造”ではなく
完全なオリジナルのレースカーを作っておいて、市販車の“皮”をかぶせたのもの
GT選手権の車は、ここまでしないと勝てない
この車、制作費だけで4000万円以上だという
ヒェ~~~~ッである
コックピットも、車と言うより、戦闘機のコックピトの様だ
こんな化け物のようなレースカーで松永さんは戦うのか
ニコニコとしてみんなに気を使ってくれながら話をしている松永さん
あなたは一体何者なんだ!
GT選手権は、1台二人のドライバーで戦う
松永選手とコンビを組むのは「長島正興」選手
あの巨人軍の長島茂雄の次男坊である
さすがに日本で一番人気があり観客動員トップのレース
スターが揃っている
(長島選手の写真を撮り忘れてしまった)
決勝レースは1時から
コースインしてから、グリットについてからまた大勢の車に囲まれて
にぎやかな時間があってから
いよいよレースの始まりだ
私たちは、ストレートエンドの第1コーナー手前で見ることにした
いよいよスタートというときにやっと見物の位置に座った
フォーメーションラップがはじまり
そのまま、グリーンランプでスタート!
どんなポジションで飛び込んでくるか、食い入るように疾走する車列を見た
「いない!」
17番セリカが来ない!
「ありゃ~~~もうおしまいか?」
がっかりして、それでもレースを見ていると
5周目ぐらいに
不意にピットレーンから17番セリカが出てきた
何があったのか、コースからではさっぱり分からない
1周回ったら、またピットに引っ込んでしまった
「だめか~~~っ」
またがっかりしていたら
すぐピットから出てきて、今度はもう引っ込まない
順調に周回を重ねている
しかし、他の車とはすでに6から7ラップぐらい遅れている
もう勝負は無い
淡々とラップを重ねる17番セリカ
何ラップかしたころ
ピットイン
今度は通常のルーティーンのピットイン
ドライバー交代もする
ピットに歩いて戻る
グットタイミングで、ピットでピットインを見ることが出来た
車から降りてきた松永選手は消耗していた
1時間ぐらいのドライブだが
それだけGTのレベルが高いと言うことか
そんな状態でも、松永選手は私のところに来て話を始めた
そこで、疲れ切っている松永選手に、遠慮なしに聞いてみた
私「スタートできなかったんですか?」
松永選手
「車内で火が出ちゃったんですよ。
フォーメーションラップでおかしいと思って、ピットに入ったら
止まったところで、車内から火が出たんです。
止まった所でよかったです。
あれで走っている時だったら、危なかったですよ。」
松永選手
「それで、火を消して、ガソリンが漏れていたところを直して、出て行ったんです。
で、一周回って、もう一度ピットに入って直したところを点検して
また出て行ったんです。
でも、走り出してからは結構速かったんで、これからは大丈夫です
すいませんでした。
せっかく応援してくれたレース台無しにしちゃって。」
そう詫びて、炎で焦げたレーシングスーツの“ソデ”の部分を見せてくれた
分かりますか?“ソデ”の左側の部分が焦げているところを
そうこうしているうちに
そろそろゴールの時間になった
スーパー耐久に比べる時間のペースが早い
松永選手は、もうすぐゴールと言う直前になったころ
ピットウォールに出て行った
完走である
それまでは、レースに浸っていると言うより
ゲストに色々気を使ったり、説明をしていて、ドライバーと言うより
チームの広報って感じ
本当に大変である
レースで生活をしている本当のプロドライバー
彼らは、ビジネスとしてレースをやっている
レースに出ること自体がビジネスであり、生活なのだろう
プロドライバーとは
その存在自体がスターであり
華やかな環境の中で、おのれのプライバシーは二の次
個人的な感動よりも、まずビジネス
巨額のお金が動くレースの世界そのものがビジネスの最前線
また新しいレースの一面を見たような気がした。
このレースを見て、駐車場まで戻った
途中で道を間違ってしまったり
すっかりくたびれた私たちは
痛い足をさすりながら途中で何度も座り込んで
やっと1時間半ぐらいかけて遠い駐車場に戻ったときは
外はもう真っ暗であった
このレースは、私たちのスーパー耐久とはかなり違うモードであり
耐久レース参戦記を書いていたときは
どうしても、このGT戦の事を書けませんでした。
ちょっと考えさせられた今回の経験でした。
そして、遠い駐車場に止めての観戦は
私にはもう絶対無理であることもよく分かりました。
ああっ、くたびれた
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