谷 好通コラム

2003年12月19日(金曜日)

855話 習慣からの呪縛

今日、朝早くの新幹線に乗って、東京から名古屋に帰った

 

昨日は六本木のドイツレストランで飲んだ
普段ならば、絶対にその日に帰るのだが
きのうは、時間を気にせずに、じっくりと話をしたかったので
前もってホテルを取っておいたのだ

 

翌朝
6時半に起きて
朝飯は電車の中で食べるつもりで
すぐにホテルを出た

 

泊まったのは“品川”
品川駅から山手線で東京駅まで出て
東京駅で新幹線の切符を買い、「のぞみ」に乗った

 

新幹線「のぞみ号」
出発してすぐに
「次は品川」と車内放送が言う

 

そうだ、今は品川駅に新幹線が止まるのだ

 

知らなかったわけではない
品川に泊まったのだから
品川から新幹線に乗ればいいのに
私はなんの抵抗も無く、品川から東京駅まで出て
東京駅から新幹線に乗ってしまった
料金的には、たぶん100円も違わなかっただろう
しかし、時間的には30分はロスした

 

私は、品川駅に新幹線が泊まることをよく知っていた
にも関わらず
今までの習慣で
何の疑いも無く東京駅まで出てしまったのだ

 

「あ~損した、バカだなぁ」
と、しみじみ思う

 

しかし、こんなことって本当によくあることで
たまたま習慣になっている事が
知らぬ間に、自分の行動を縛ってしまい
自分の行動パターンを決定してしまっている事があるのだ
行動パターンどころか
発想のパターンまで縛っていることも多い

 

25年以上の長い年月、私はガソリンスタンドで働いてきた
サラリーマンとして、そして独立してからは店主として
大変長い間、スタンドを自分の仕事の場としてきた

 

その長い時間に、ガソリンスタンドとしての習慣を数多く身に付けていて
それが、体の芯まで染み込んでいる
そう感じる事がある

 

ガソリンスタンドは基本的に“物販業”である
メーカーが作ってきた燃料を、“物としての商品”を、売る商売である

 

それに対して“洗車”は
自分たちの手で、自分たちの店の中で
付加価値を作り上げる“サービス業”である

 

燃料と洗車
たまたま同じ自動車を対象としているので
燃料も、洗車も、同じスタンドで売っているが
ビジネスの質としては、まったく異質の商品である

 

物販業とサービス業
商売そのものが違う
だから、接客そのものもずいぶん違うものが求められるのだ

 

たとえば
同じサービス業、床屋さんで考えて見れば
店が混んでいて
待っているお客様が何人かいる状態で
床屋さんの亭主は
どうするか

 

待っているお客様のために
今やっている理髪を大急ぎでやるだろうか
走り回り、汗だくだくで客の頭をさばいて行くのだろうか
・・・
もし、そうだとしたら
待っているお客様たちはどう思うだろうか

 

自分たちの待ち時間を少しでも減らすために
今の客の理髪を大急ぎで片付けようと、ジタバタしている床屋の親父の姿を見て
自分たちの番が来たら
自分たちもああやって、ジタバタと理髪をされるのかと思うだろう
そして
「すいません。急用を思い出したんで」と
逃げ出すのではないだろうか
急いで頭を刈られるのと、キッチリと頭を刈られるのでは
その仕上がりが違っていて
つまり、付加価値が変わってきてしまうのだ

 

サービス業は急いではいけない
少なくとも、急いでいると思わせてはいけない

 

しかし
燃料の給油の場合は、逆であろう
店が混んでいて、給油の順番を待っているとき
前の客の給油がゆったりとしたペースで作業されていたら
「はよっ、せんかい!」と思ってしまう

 

給油は、急いでやっても、キッチリやっても
「車が走るために必要な燃料が補給される」という付加価値には
なんら変わらないのだ

 

(ただし、これは
給油の商売そのものが、実はサービス業であるとしている店
たとえば、アイビー石油さんのような場合は、また話が違うのだが)

 

快洗隊を創った張本人である私ですら
洗車とかキーパーで店が混んでくると
「もっと急いで作業をしろよ」と、自然に思ってしまう

 

これは、ほとんど反射的に反応してしまうのだ

 

サービス業である洗車屋
車を洗い、磨き、掃除して、お客様の車に対してプロのきれいさを提供する商売
それに対して物販であるガソリンスタンドで
長い時間を過ごし
その習慣を身に染みさせている私には
忙しい場面を見ると
どうしても
「急げ」と、思ってしまうのだ

 

そんな事が、他にもいっぱいある
ガソリンスタンドの洗車の限界とは、実は、こんなところに潜んでいるような気がする

 

だから、快洗隊については
特に、忙しい場面においては
私は口を出してはいけないし、近づいてもいけない
そんな風に、真剣に思っている

 

身に染みた習慣は
自分ではどうしようもない所で
自分を縛ってしまっているものだ

 

習慣が作り出した呪縛
時代が変わる時
分かっちゃいるのに、自分を変われない
そんなことに似ている

 

新幹線が止まるようになった品川駅は
あっという間に巨大なビルに囲まれてしまった
昨日泊まった品川のホテルの、たまたま最上階の窓から

 

 

朝、名古屋に帰ってきてから
名古屋高速がメチャクチャ混んでいた
いよいよ師走
町全体がせわしくなってきた

 

 

快洗隊も、もう年末の勢いで忙しくなってきている
刈谷店が洗車だけで300万円を突破
知立、安城も150万円を突破
北神戸も、今日は知立・安城を越えた実績を出し、必死に着いてきている

 

こんなときこそ
下手に慌てるより、一台一台をキッチリきれいにしていく事が肝心なのだ
それが来年に確実に繋がっていくことなのだ

 

彼らに呪縛などない

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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