谷 好通コラム

2004年02月11日(水曜日)

890話 750kmの日帰り

昨日(10日)、全く偶然にも四国西条市において
モービルクリーンベースの黒木裕二氏と再会した

 

私が現在、洗車に特化した事業を手がけているのは
そのモービルクリーンベースさんとの出会いが大きかった
それは約15年前の話である

 

話はもっとさかのぼって
約20年前
私は、1軒のガソリンスタンドを経営する会社として
株式会社タニを立ち上げた
そのスタンドは築約20年の古いスタンドで
150坪
実質的にダブルの計量器2基
現在の快洗隊・刈谷店の場所にあった

 

この店の建物・設備を、石油メーカー系の会社に買い上げてもらって
地主さんからの地代と共に
私が貸してもらう形でガソリンスタンドの営業を始めた
上下の賃料は17万円(今、思えばとんでもなく安かった)
そこまでの経緯も非常にたくさんのエピソードがあるのだが、今日のところは割愛する

 

安い賃料に加えて
最初は私と家族の二人だけでの運営
一生懸命商売をやらせていただいた甲斐があって
燃料油を200キロリットル/月販売して、常に油外収益も100万円以上
その頃としてはかり優秀な営業成績を上げていた
その頃の燃料は今と違って、かなりの利益があった
そんなことで、会社としても、それなりの利益を上げる事が出来ていた

 

何年かが過ぎて
こうなると、2軒目の店が欲しくなる
しかし、そう簡単に見つかるものではない
誰かが世話してくれるのを待っていても、当てになるものではない
自力で見つけることにした
建設用地を探して、自分でスタンドを建てることにしたのだ

 

※今ならばスタンドの閉鎖物件を探すところだが、その頃は、まだバブル最盛期
閉鎖するスタンドなどどこにもなかった。
加えて、土地の買い取り・建設費用を、銀行からかなり借り入れることも出来た。

 

それにしても、創業してまだ4年余、それほど余裕があるわけではない
銀行からの信用も万全ではない
立地の良い、高い土地を買うことは出来ず
当時はほとんど通行量のないような土地を132坪買付けるのが精一杯であった
それが、現在のトレーニングセンターの場所

 

しかし
土地を買ってしまったのはいいが
あまりにも通行量が少なく
石油元売さんからの「マーク」を貰うことが出来なかった

 

当時は、ガソリンスタンドの「総量規制」というものがあって
1軒の店舗の廃止がなければ、1軒の新しい店を開くことが出来なかった
新しい店舗を開く事が1つの権利のようになっていたのだ
だから、こんなあまりにも貧弱な立地の土地に
その権利を渡すわけにはいかないという事であったのだろう
これを短く言うと
「マークがもらえなかった」となる

 

それでも
「そんなことを言っていても、店を建設してしまえば、何とかなるだろう」
と、恐れを知らぬバカな私は
借金でガソリンスタンドの設備を建設してしまったのだ

 

しかし世の中そんなに甘くはない
店が出来てしまっても、やっぱりマークはもらえなかった
私は途方にくれた

 

そんなときに、業界紙である燃料油脂新聞に
“モービルクリーンベース”の記事が載っていた
横浜で、洗車に対する素晴らしい経営実践を行っている会社があって
そのノウハウを広く世間に紹介している
そして、経営者対象の教育を受ける人を募集しているとも

 

「“油”がダメなら“水”、洗車の専門店というのも面白いか、
洗車だったら、ガソリンスタンドのように担保も要らないし。」

 

私は、早速電話をして
すぐに横浜まで見に行った

 

そこは一見、コイン洗車場であった
しかし、そこはただのコイン洗車場ではなかった
そこには何人かのスタッフがいて
来場者の世話をしていて
よく知れば知るほど、とんでもない大きなビジネスが繰り広げられていたのだ

 

そして、お会いしたのが
今では全国的に有名な高木靖男代表(当時は専務、実質的な代表)
そして、黒木裕二専務(当時は部長)

 

その時どんな話をしたのか、今では憶えていないが
高木専務(当時)の話に大きな希望を見出して
私はその場で、私自身の社長研修と店長研修を受けることを申し込んだ

 

まず、私の社長研修
スプレー洗車での洗車の技術から
鉄粉取り、ワックス取り、そしてポリッシャーによる塗装研磨
高木専務(当時)からの講義
最初の何日かは、用意されたアパートに泊り込んでの研修であった

 

その時の講義による研修は高木専務(当時)

 

実践研修は黒木部長(当時)

 

黒木部長は私よりいくつか年下ではあったが
優しい口調で
詳しく、丁寧に技術を教えてくれたことを憶えている
厳しい高木代表に対して、優しい黒木部長
そんな構図で
特に黒木部長にはとても親しみを持ったことも

 

しかし、私も社長
そう何日も連続して店を空ける訳には行かない
区切りの良いところで一度愛知の店に帰って
通いの研修に切り替えた

 

朝5時ごろ名古屋を出発して375km高速を走って
午前9時までに、横浜栄区のモービルクリーンベースまで到着
それから、研修を受けて、話をして
クタクタになってから
午後8時ぐらいに横浜を出発
帰りの375km途中で休みながら深夜12時過ぎに家に到着
次の日、店に出て二日分の仕事をして
翌日、また往復750kmの日帰り研修を受ける
そんなことを研修中、研修後と何十回もやった

 

私は、往復750kmの日帰り研修を受ける通いの研修生であった

 

高木専務の講義の中で
最も大きく自分の中に残ったことは
「教える事が、もっとも大きなものを生み出し、最も効果的なことである」ということ
違う言い方をすれば
「与えよ、さらば与えられん」とか
「与えることが初めにあり、そこからしか、ビジネスの出発はない」とか
「買ってもらうことを考えず、とにかく教えること、結果としてビジネスが成り立つ」
多分どの言葉も
高木代表の言葉ではない
私は、そう受け取ったということだろう

 

本当は、何とか理論といって
もっともっと内容の深いものであったのだが
残念ながらそこまでは憶えていない
しかし、この考え方が今でもアイ・タック技研の基礎になっている

 

卒業した時はうれしかったが
無茶な店の作り方をしてしまった後なので、不安が先にたって
手放しでバンザ~イとはならなかったことも覚えている
いただいたディプロマ(認定書)は、7番目のもので
モービルクリーンベースとしても創世記
社長研修としては最初の卒業生であった

 

そうして出来上がったのが
「クリーンベースWith」
(その頃の痕跡がトレセンにはたくさん残っている)
最初の店長は、直に辞めてしまったが
その後を継いで、現アイ・タック専務の谷清隆が店長となり
苦しい時代を経て
1年半後
ガソリンスタンドの“総量規制”が撤廃され
「クリーンベースWith」にガソリンスタンドの商売が加わった
「共同石油・クリーンベースWith店」

 

洗車専門店であったときは
その立地もあって
集客に多大な費用を要し、経営的に苦しいものであったが
ガソリンスタンドを併設した形になったとき
ガソリンスタンドが持っている自然な集客力が加わり
爆発的に売上が上がるようになったのだ

 

平成3年12月
社員スタッフ2名
アルバイト2名で
洗車関連売上405万円を達成
燃料油100キロリットル

 

当時としては
少なくとも中部地方ではぶっちぎりトップの成績であり
それを実質2名のスタッフが、たった132坪の店で上げたことは
業界新聞で大きく取り上げられ
見学者が多く訪れるようになった

 

これが、この会社が洗車事業を手がけた最初のいきさつであり
多くの見学者に効率的に対応するために開いたスクール形式の説明会が
現在のワンデースクールの原型であった

 

また、この時
“待てる時間(40分)で作り得る最高のコーティングとは”をテーマに
独自のシステムを作り上げたのが
現在のキーパーシステムの原型であった

 

「教える事が、もっとも大きなものを生み出し、最も効果的なことである」
「買ってもらうことを考えず、とにかく教えること、結果としてビジネスが成り立つ」

 

最初、それが新しいビジネスを作り出すことにつながるとは
考えもせずに始めた“ワンデースクール”

 

ガソリンスタンドでもあるこの店舗に訪れるお客様のために
何とか最高の綺麗さを提供したいと考えて作り出した“キーパーコーティング”の基礎

 

いつの間にか、ガソリンスタンド独自のコーティングシステムとして
キーパーを全国に広めるビジネスにのめりこんで行き
そんな頃から
モービルクリーンベースさんとは別の道を歩み始めた

 

今では、私のことを
不肖の弟子
(親とは似ても似つかぬ子供のように育ってしまった弟子)と
高木代表が笑っておっしゃっておられたと聞いた事がある

 

しかし、私は
あの時の経験と
「教える事が、もっとも大きなものを生み出し、最も効果的なことである」
この基本的考え方が、今を作り出した基礎となっている
本当にありがたいと感謝している

 

居眠り運転をしそうになって
何度も危ない目をした“往復750kmの日帰り研修”

 

「今ではとても出来ないなぁ」
久し振りにお会いした黒木専務とお話をして
そんなことを思い出しました。

 

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