2005年02月20日(日曜日)
1122.「新しくなりました」
一昨日の話だが、
山形から小型コミューター機に乗って、県営名古屋空港に帰ってきた。
その前日に中部国際空港が開港していて、
今までの名古屋空港は、
ローカル路線のためのコミューター空港に変身しているはずである。
山形を午後4時20分に発ち、
午後5時にかかる頃、名古屋空港への最終着陸態勢に入った。
小型ジェットであるCRJの降下角度はかなり急であり、
しかも、着陸降下コースは以前よりかなり東側になったような気がする。
陣取った席は[1A]である。
進行方向に向かって左側、通常の着陸方向であれば、空港ビルが見える側である。
着陸寸前、空港の国際線ビルが見え始めた。真っ暗である。
そして、着陸。
窓に顔をくっつけるようにして空港の様子を見る。
「ええっ~~っ!ナンダありゃ、アントノフじゃん!」
思わず大声を出してしまった。
国際線ビルの前には、
いつもの国際線用の華やかな航空機たちは一機もいない代わりに、
世界最大の貨物専用機ロシア製の「アントノフ124」が、
横付けになって駐機している。
はじめて見た真っ暗な国際線ビル。
はじめて見る「アントノフ」
それが、たて付けであったはずのエプロンに横付けになって留まっている。
ショックであった。
本当は、着陸して飛行機が停止するまでデジカメは使ってはいけないのだが、
興奮し思わずデジカメを出して、その様子を撮った。
撮ったのは、国内線のビルを通り越して滑走路を2/3ぐらい行ったところで、
飛行機がUターンして誘導路に入る直前、
国内線ビル側から、遠くに国際線ビル側のエプロンを眺める地点。
ガラ~ンとしている。
少し進んで、望遠で撮ったものをさらに拡大して見ると、
アントノフ124の巨大な後姿が分かる。
私にとってこれだけでも十分なショックであった。
多分、この世界最大の貨物機が名古屋空港に来たこと自体が初めてであろう。
(参考:ホームページから拝借したアントノフの写真)
やがて、国内線ビルの前に我がCRJが止まる。
今までならボーディングブリッジが何本も出ているビルの前ではなく、
その脇の方の空地に止まり、バスが迎えに来ているのだが、
今回からは、ビルのまん前に横付けだ。
降りて周りを見渡すが、遠くに同じCRJがぽつんと一機止まっているだけで、
何もいない。
そこから歩いて、地面を歩いてビルに入る。
今、歩いているところは、
これまでだったら、一般の乗客は絶対には入れないところである。
私も何百回も空港に来たが、ここを歩いた経験は一度もない。
ここで、なんか、情けなくなって、涙が出てきてしまった。
形はそのままなのに、すっかり変わってしまった“いつもの”空港が、
かわいそうな気がしてしまったのです。
降りたところからビルの入り口までほんの50m、
ビルの入り口では、「航空宇宙展示館」に展示してあった「三菱MU2」が解体されて、
運び出されるところ。
他にも「ゼロ戦」の復元機もあるはずだ。
これらの展示物をどこかへ運ぶために、あの「アントノフ」は来ていたのかもしれない。
ビルに入ったところは、すぐに手荷物受け取りのコンベアーであった。
今までなら帰ってきた客でごった返していた場所も、
ほとんど誰もいないガラ~ンとした場所に変わってしまっている。
ビルの一階は、前々日にここを飛び立った時の様子とは全く変わっている。
売店も、喫茶店も全部ベージュのパネルで塞がれて、
無機質な空間になっている。
チェックインカウンターは「JAL」だけ、正確には「J-AIR」だけ。
ANAのカウンターがあったところには、
売店と待合のコーナーがあって、二階にあった椅子が並べられている。
ここで飲み物と軽食のサービスも受けられそうだ。
前回のコラムの解体の写真は、このコーナーを作っている様子であったのだ。
搭乗口のある二階に行って見た。
二階は、もっと徹底して無機質になっている。
ずらっと並んだレストランは、すべてパネルで塞がれ、
ぽつんと手荷物検査場の入り口があった。
検査場の入り口の脇に
ガードマンであろうオジサンが立っていた。
思わず、
「いや~~~、あっという間に変わっちゃったんですね。びっくりしました。」
と声を掛けた。
オジサンはニコニコとして、返事をしてくれた。
「ああ、変わったでしょ。 すっかり新しくなりました。」
がらんとしたロビーに声がよく響く。
私は、そこでまた泣けてしまった。
「そうか、新しくなったんだ。」
あのガードマンのおじさんの、明るい声に、救われた。
長年慣れ親しんだこの名古屋空港が、
何十分の一の乗客しか来ないコミューター空港に成り下がってしまった現実に、
ショックを受けていた私に、
「新しくなりました。」の言葉は、新鮮であり、
この“新しい姿”になった名古屋空港を、いっぺんに好きにさせてくれたのだった。
車で国際線ビルの方に行ってみる。
ビルは非常灯が点いているだけの真っ暗であった。
まだ立ててから十年もたっていない新しいこのビルは、何か商業施設になるらしい。
時代は変わる
今、有って、当たり前のように思えている物が
どんどんと変わり、無くなっていく
しかし、それを惜しんだり、悲しんだりしている間にも
その無くなっていくものの中にすら
このオジサンの一言
新しいものに変わろうとする力があることに、気がつき
新しい新鮮な勇気が湧いたのでした
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