谷 好通コラム

2006年10月23日(月曜日)

1496.ものづくりの難しさ

4日間もこのコラムからご無沙汰をしてしまった。
たぶん、さぼった最高記録ではなかっただろうか。

 

たしかに、今度こそ本当に風邪を引いてしまった。
別に熱が出たわけでも何でもない。
ただ鼻が出て、なんとなくタバコが吸いづらい程度に喉が痛かっただけ。

 

それでも、何故風邪を引いたのか。
「風呂に入ったから」である。
私は、夜に風呂に入ると体温が上がるからなのか、
夜、眠れなくなってしまうので、必ず朝食を取ってから風呂に入る事にしていた。
しかし出張が続いて、
何となく二日間風呂に入らなかったことがあって、
あまりにも気持ちが悪く、
珍しく、夜、風呂に入った。
しかし、二日も風呂に入っていなかったので
体中についていた垢が全部取れてスカスカになったような気がして、
体温が上がるどころか、寒気がして、
そのまま風邪を引いてしまったのだ。
ウソのような話であるが、本人はそう信じている。
「あまりにも体が汚くなった時には、絶対に、夜に風呂に入ってはいけない。
スカスカになって、風邪を引いてしまうのだ。」

 

馬鹿な話はそれくらいにして、
風邪を引いて体調は良くなかったのだが、
もちろん、それだけではない。
そんなことでコラムを書くのをやめていたら、1496話にまで書けはしないのだ。

 

風邪気味になったその日からトニーがロスからやってきて、
いよいよアメリカでの活動の拠点である「アイ・タックUSA Inc.」を立ち上げるための
打合せと、活動のための商品知識の特別研修を真剣にやっていた。
と同時に、
ドイツから、SONAXの研究開発の責任者Dr.ピッチと、
研究室のハナオ氏がやってきて、ダイヤモンドキーパーの研究を合同でやったのだ。

 

日本語とドイツ語で通訳を通じての議論は、
非常に集中力を要すもので、
特に今度の議論は真剣であり複雑であって、
しかも、こちら側の研究室の責任者が急にぎっくり腰になり、出席できず、
急遽、化学的、理論的な議論の主役を私がする事になっていて、
丸一日それをやると、精神的にかなりぐったり来るのだ。
それで、ちょっとばかりの風邪引きと相まって、夜、文章を書く気力を起こせなかった。
それが、コラムを四日間もサボった言い訳です。

 

 

ダイヤモンドキーパーは、これまで二年間も研究と開発を進めたもので、
そのレベルは間違いなく第一級のものであり、
今の時点で世界一だと信じている。
しかし、それが、
実際に施工店で施工されてくると、
全く想定外の問題が見えてくることがある。
すでに500軒を越す施工店で、1万台に及ぶ車に施工されている。
すると、どうしても理解できない現象が数台に出現することがある。
その出現の確率がコンマ以下のパーセントであったとしても、
どうしても解決しておかなければならない。
その現象は一番暑い時期、35゜Cを越すような時に一時的に出て、
涼しくなった今はその現象もすっかり無くなってしまい心配ないのだが、
次の夏に向けて、徹底的に解決をしておく必要がある。

 

夏の時点で、その現象をドイツのSONAXに報告をし、
吉村さんの翻訳を通じてメールで議論をしていたのだが、
どうしても、その現象をドクターピッチには理解してもらえない。

 

SONAXの本社、研究室があるのはドイツ・ノイブルグ。
涼しい地域であり、今現在で朝晩はもうO゜Cを下回り霜が降りているという。
だから真夏になっても30゜Cを越すようにことはなく、
こちらが言う現象をどうしても再現できなかったのだ。
それにその現象が出るある特定の車種のある特定の種類の塗装は、
ドイツでは手に入らない。(輸出されていない。)

 

だから、とにかく日本に来て、その現象があることを見ないと
ドクターピッチには理解できず、そのメカニズムを理解出来ないので、
どうしても来て欲しいと強く要請し、今回の来訪となった。

 

テストのために、
その特殊な車種の、特定の年式の、ある一部の塗装の車を調達するのには、
開発部も困難を極めたようだ。
それでも、何とか一台だけ快洗隊スタッフの家族の車に見つけた。

 

しかし、日本もすでに涼しくなっていて、
その車でも、なかなかその現象を再現することが出来ない。
そこで、考えたのは「夏を作ること。」
新しい社屋になって、開発部は車が一台余裕を持って入る“開発室”を持った。
その開発室のシャッターを閉めきり、
中で業務用の大きなストーブを焚いて、
35゜C以上に暖めたのだ。
それでも、なかなか現象は出せない。
う~~ん、参った。色々考えて、
その問題の車を中に入れたまま三日間暖め続けた。
高い温度に長時間あることによって、初めて塗装の内部まで夏の状態になるようだ。

 

そして、やっとその現象を再現したのはドクターピッチがやってきた前日。
ギリギリでセーフである。

 

こうしてドイツと日本の私たちによる合同テストが始まった。
だから、テストはその35゜C以上に暖められた開発室の中で行なわれたわけになる。
みんな汗だくである。
それでもみんな真剣な顔だ。
今回のテストで一番活躍したのは、開発部の増田君。

 

結果として、テストは非常に大きな成果を挙げた。

 

その特殊なケースでの特殊な現象は見事に再現できたし、
長い紆余曲折の議論の末、
その発生メカニズムについても、ほぼ明確に解明できた。
こちらが予想していたメカニズムに、
SONAXの研究者二名が合意する形で、別の視点から解説してくれた。
そうなれば、その対策もおのずから出てくる。

 

ぎっくり腰の我が研究員が、
肉筆で書いた見解をFAXで送ってきてくれて、
それが決定打となり、対策の方向もほぼ決まった。
あとは、その対策を色々なパターンで実現したサンプルを、
徹底的にテストしてみることだ。
当然、そのテストは35゜Cに暖められサウナと化した開発室で行なわれる事になる。
大変だ。

 

一万台に及ぶ施工の中から見つかった、
ある車種の、ある年式の、ある塗装にだけ見られる、暑い時期だけの特殊な現象に、
とことんこだわって、解決に結びつけることが出来るのは、
我々にとっても大きなノウハウの蓄積となる。

 

(「ある車種」とか、ぼかした言い方ばかりで本当の申し訳ないのですが、
すべてノウハウにつながることなので、どうか勘弁をしてやって下さい。
だからテスト中の写真も載せられません。)

 

稀なレアケースであるからといって放置していたのでは、
このノウハウは作り上げることがではなかった。
「もの作り」って、本当に大変なんですね。
風邪を引いていたので、真夏の開発室は本当に答えました。

 

でも開発部は、
これから真冬になっても、真夏にした開発室の中でテストを続けるわけです。
若いとはいえ、これは大変なことであって、「ご苦労様」と感謝するばかりである。

 

ドイツから、このことのためだけで来日してくれた
ドンターピッチと、ハンサムなハナオ氏。

 

 

※すべてのテストが終わって、皆で食事会。
北海道から駆けつけてくれたエムズの西岡さん、
通訳で色々な角度で助けてくれたトニー。
ありがとうございました。
しかし、貸して貰ったテスト車の後始末(現象を消して、車全体をピカピカにする)
を急ぐ増田君は参加できなかった。本当にご苦労様でした。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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