2007年11月03日(土曜日)

1767.共存共栄から潰し合いへ

会社の事務所のすぐ近くにガソリンスタンドの建設が進んでいる。
たぶん年内には開店するのだろう。
コンビニの「セブンイレブン」とセルフの「エキスプレス」の併設店だ。

 

セブンイレブンは、
コンビニ業界のナンバーワンで圧倒的な販売力を持っていて、
近くにセブンイレブンがオープンすると分かっただけで、
周りの他マークのコンビニが戦意喪失し、
先にとっとと閉店してしまうケースをよく目撃して来た。
「エキスプレス」も、
ガソリンの販売についてかなりの力を持っているスタイルで、
周辺の小規模ガソリンスタンドの販売数量が激減するという話をよく聞く。

 

この新しい建設中の店舗のすぐ近くには、
ほんの一ヶ月前にリニューアルと駐車場を大幅に拡大したローソンがある。
コンビニは運転が未熟な主に女性客を確保するために、
駐車場を拡大することが生き残りの条件のようになってきていて、
このローソンも、かなりの投資をして、店舗のリニューアルと駐車場を拡大したのだろう。
この店のオーナーは、リニューアル後すぐに
こんなに近くに「セブンイレブン」が出来ることを知っていたのだろうか。
知らなかったとしたら絶望的なショックを受けただろうし、
知っていて、あえてリニューアルと駐車場の拡大をしたのなら、
そのオーナーは、大変勇気のある人と言える。

 

エキスプレス・セルフスタンドの近くには、
私たちが伝票で燃料を入れている民族系のスタンドがあって、
その店は、昔ながらの販売スタイルをとっている。
60歳のお父さんとお母さん、3人の娘さん、2人の社員スタッフ。
合計7人が交代でスタンドに立ち、給油の車すべてに窓拭きをし、送り出しをする。
接客も特に洗練されたものではないが、
伝票で契約しているお客様が70%で、暖かい人間関係をたくさん持っているのだろう。
しかし、ほとんど給油のみで油外収益はほとんどないのではないだろうか。
作業をしているところはまず見ない。
そのスタイルからキーパーはちょっと無理かなっと思って、お勧めしていない。
燃料は150kl売っていると言っていた。
昔ながらのまあまあ繁盛しているスタンドである。
燃料の値段の交渉はしたことはないが、ありがたいことにけっこう安く入れてくれている。

 

エキスプレスがすぐ近くに出来ることによって、
やはり、かなりのダメージはこうむるだろう。
オーナーのお父さんはエキスプレスが近くに出来ることを知って、どう思っただろう。
この店は数年前に全面改装をしたばかりであって、
正直、お気の毒としか言いようがない。

 

そんなことを思っていたら、
昔のことを思い出した。

 

22年前に築20年の中古のガソリンスタンドを借り営業を始めて5～6年後、
そのころの燃料の販売量は200klを越して経営は順調であった。
すでに二軒目の店舗も開き、
いろいろと紆余曲折はあったにしろ、洗車に特化したスタンドとして、
順調に利益を出していた。
ところが、
一軒目の店の目の前に「大型の新設スタンド」が出来ることになって唖然とした。
もう25年以上経って老朽化が進んだ店舗では勝ち目がないように思えたからだ。
悩んだ挙句に、自分の店を壊し、目の前の敵が出来上がる前に、
店舗を新しく建て直し、全面戦争をすることにした。
(店舗はリースであったので、元売さんに無理を頼んで建て直してもらった。)
おめおめ負けてたまるか。ということだ。

 

戦争は熾烈を極め、徹底的にやった。
ガソリンの値段も相手より必ず1円安く、それが仕入れ値を割ってでも徹底的に戦った。
その結果、販売量は相手を圧倒し、眼前の敵の販売業者は半年で撤退した。
勝ったが、
すぐに新しい敵が入って、また戦いの始まりである。
そして、また勝ったが、また新しい敵が入ってきて、今度はこちらが戦意を喪失した。
仕入れ値を割っての販売が続いていて、
そのスタンドにおいては、すでに建設費を上回るような赤字が出ていたのだ。
それで、申し訳ないが元売さんに謝って、そのスタンドから撤退したのだった。

 

そのあと何年か経って、
眼前の敵も疲弊したのか、とうとうスタンドを潰して撤退し、
こちらのスタンドも新しい運営者がギブアップして、閉店をした。
その閉店している店舗の建物を安く売っていただいて、
快洗隊・刈谷店がオープンしたのは、今から10年前のことである。

 

 

その昔、ガソリンスタンドは世の中の流れの中でどんどんその数を増やし、
そのみんなが、組合を作って、その中での話し合いで、共存共栄を図っていた。
そういう意味で平和であった。
しかし、十数年前、
私の創業の店の眼前に大型スタンドを建て、
同業者として戦いを挑んできたことは、その頃においては大事件であった。

 

しかし、今では、
そんなことは日常茶飯事となり、
同業者同士の共存共栄など跡形もなく、潰しあいの、競争の世界であり、
容赦ない殺し合いの世界である。
ビジネスの世界では当然であり、当たり前のことではあるが、
「セブンイレブンとエキスプレス」の併設店の建設現場を見て、
恐怖を感じているだろう近所のローソンとスタンドのオーナーの気持ちと、
10年以上前の私の恐怖が重なり合って、背筋が寒くなる思いがした。

 

 

快洗隊、札幌店の内部のデザインイメージが送られてきた。
この店がまた新しい時代を切り開いてくれるかもしれない。

 

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