谷 好通コラム

2008年06月26日(木曜日)

1952.お金の使い方を変える

一昨日、新小岩の東京営業所から羽田空港に向かって高速を走った時、
驚いたことがあった。
箱崎のジャンクションがガラガラであったのだ。
おかげで、今まで約1時間はかかっていた新小岩⇒羽田が30分で到着したのだ。
今まで何十回となくこのジャンクションを通ったが、
必ず何らかの渋滞が発生していてネックになっていた。
たまたまなのかもしれないが、
減速すらせずにこのジャンクションを通過できたのには驚いた。

 

ガソリンなど燃料の値段が上がって、
自動車の使用を控える会社が増えたことが原因なのかもしれない。
「みんな経費節減、やっているな。」そう実感した。

 

会社の利益とは、「売り上げ」-「原価」-「経費」=「経常利益」
日本全体の景気が低下している現状では「売り上げ」が上がることは一般的に難しく、
それでも燃料費の高騰に伴って「原価」が上がってくることは避けられない。
とすると、
たとえば営業努力で「売り上げ」が現状維持できたとしても、
「原価」が上がってくるならば、
「粗利益」が下がるので
「経常利益」を維持するためには
「経費」を下げることが必要になってくる。
にもかかわらず色々な経費の要素が上がっているので、
「経費」は下げるどころか、むしろ「上がってしまう恐れが大きい。
となると、「経常利益」は下がる一方になって、
会社の経営そのものが危機に瀕し、
会社は「経費」の中で一番大きな要素である「人件費」に手を付けざるを得なくなる。
それがベースダウンであり、残業のカットであり、雇用の減少であり、
消費者の所得低下につながらざるを得ない。
消費者は購買力が低下し意欲も低下する。
社会全体の「売り上げ」が減るわけで、
この循環が繰り返されると、
いわゆる「不景気」が加速されていくことになる。

 

物価が上がり、金利も、給与も上がっていくのがインフレーション。
物価が下がり、金利も、給与も下がるのがデフレーション。
しかし、
物価が上がるが、
給与は上がらないのがスタブレーションと言い(にわかおぼえ?)、
実はもっとも恐ろしい循環なのだそうだ。

 

会社としてこの危機を乗り越えるために
まずやらなくてはいけないのが、
経費の使い方のスタイルを変えること。
売上げが上がらないことを前提に考えると(売り上げを上げる営業努力は全力で続けても)
原価が上がることが避けられないので、
経費を下げるしかない。
しかし、経費を発生させる一つ一つの要素は値上げになっているので、
経費を下げるには、
その「経費の使い方を変える」しか方法は残されていない。

 

・今まで高速道路を使っていた場合でも、一般道を走る方法に変える。
・今まで車で行っていた所に、電車を使う方法に変える。
・今まで燃費の悪い車に乗っていたところを、燃費のいい車に変える。
・今まで燃費の悪い運転で飛ばしていたところを、燃費の良い運転方法に変える。
・今までみんなが集合していた会議を、TV電話会議などに変える。
・今まで残業をしていた仕事のやり方を、残業をしなくても済む仕事のやり方に変える。
・今までクーラーをかけたのを、上着とネクタイを外し涼しい格好をする方法に変える。
・今まで外注に出していた仕事を自分たちでやる方法に変える。
・今まで自分でやるよりやってもらう方が楽であった仕事を、自分でやる方法に変える。
・今までかかっていた印刷代、郵送料を、ITを活用する方法に変える。
・今まで二人でやっていた仕事を、一人でやる方法に変える。
・今まで受けていた色々なサービスを、受けない方法に変える。
・今まではあった方がいいで買っていた物を、必要になってから買う方法に変える。
・必要になるかもしれないで買っていた物を、必要になってから買う方法に変える。
・今まで受けていた仕事を、こちらから働きかけて行う仕事に変える。

 

まだまだやるべき事は山ほどもある。

 

しかし、そういうことを実行せずに、
「今までこうしていたのだから、・・」と今までどおりの方法で安穏としている会社は、
逆に、すぐに「人件費」の節減をやろうとする。
まず「人減らし」
それが一番手っ取り早いからだ。

 

無駄な人件費は厳しく節減すべきであろう。
特に間接部門の肥大は会社にとって致命傷になるので、
厳密に合理化を進めなければならない。
しかし、
直接お客様と接し、直接生産に携わり、直接営業として販売に携わる人員に
「人減らし」をかけるのは、
販売力の低下、生産能力の低下、開発能力の低下を招き、
会社の根幹である「売り上げ・販売力」を落とすことになる。
ここが落ちれば、会社が衰退すること間違いない。
直接部門の能力アップと、商品力アップなくしては
会社の存続の力もなくなること必須なのだ。

 

「お金を使う方法を変える」という最も簡単で安全な方法も取らずに、
会社の活力の源泉である生産する力、
販売する力、開発をする力、つまり「人」を失う方法を選択するのは、
最もおろかな方法なのではないだろうか。

 

「人」を大切にし会社の活力を維持するために、
「お金を使う方法」を、今までのことにまったくとらわれずに、大胆に変えて行きたい。

 

しかし、その障害になるのも「人」である。

 

「自分のお金だったらとても使えないような事にでも、
会社のお金だったら気軽に使えてしまう。」という感覚が、
最も深刻な問題なのだ。
本当の意味で「お金の使い方を変える」とは、
「会社のお金”だから”使えてしまう」お金の使い方を、
会社のお金でも「自分のお金だったら使えない。」という使い方に変えることだ。

 

しかし本当は、
「自分のお金だったら、
自分の自由に気軽に使えるが、
会社のお金はみんなのお金だから、気軽には使えない。」
という、本来の在り方にならなければいけないのだが、
せめて「会社のお金を使う時も、自分のお金だと思ったら使えない。」
せめて、そんな価値観ぐらいにならなくてはいけない。

 

「会社のお金なんだから、いくら使っても別に自分が損するわけではない。」
そんな感覚の人がいれば、
ましてや、そんな人がたとえば会社の中核に近いところにいるとしたら、
その会社は、真の意味で「お金の使い方を変える。」ことは絶対にできないだろう。
私は、飲食をしても、
それがたとえばお客様の接待であっても、
会社の人たちとの会食であったとしても、会議であったとしても、
絶対に領収書をもらわない。
私がそれを実践しているから、
私の会社の誰も飲食で領収書をもらう人はいない。
だから、この会社はもう何年も慶弔費を除いた接待交際費はゼロである。

 

そんなやり方が正しいのかどうかは分からないが、
とにかく、ずっとそうしている。

 

みんなが汗水たらして稼いだお金を、
その目的が何であれ、自分の飲食に使うことはしない。
それだけで、経費のかなりの部分が減る。
またそれは即ち経常利益にそっくり乗ることになり、
あるいは、新しい商品の開発とか新しい考え方を直営店でテストしてみるとか、
前向きの投資への使い方が出来る訳で、
それはそっくり会社の競争力につながるはずだ。

 

日本は今、原材料費の高騰にあえぎながらも、
なかなか製品価格に転嫁出来ず粗利益が減る中で、
「人」という会社の原動力の力を減らさず、
むしろその能力を上げることによって競争力を高めて、
何とかビジネスを前に進め、
会社としての利益も確保しなければならないという難しい局面である。

 

今まで通りでは、もう通用しない時代に入ったのであろう。
まず第一に出来ることは「お金の使い方を変えること」からなのだろう。

 

 

時には大胆にお金の使い方を変える必要もある。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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