谷 好通コラム

2009年06月01日(月曜日)

2219.逃げ出すわけには行かない

会社の社長をやって早24年。
何度か何度かつまずきながら、ここまでやって来て、
会社がある程度大きくなったら、安定して多少なりとも楽になるかと思ったら、
とんでもない。
拠点が増え、社員が増えれば増えるほど、
凸凹の要素が増え、凸凹の振幅も大きくなって、
凹を何とかしようと、ジタバタすればするほど、
まるでもぐら叩きのように、
あっちを凸にすれば、あっちがへこんで凹、トータルすれば凸は思ったより小さくなって、
ジタバタは果てしなく続き、かえってひどくなっていくような気がする。

 

いい加減、いやになっちゃう事もあるが、
社長業だけはどうしても逃げ出せない運命にある。
わかっちゃいるけどやめられない。ではなくて、わかっちゃいるけど逃げられない。
(植木等の「スーダラ節」だが、解る人がいるかな?)

 

先日、自動車関連の世界的な大企業の社員の方と話をした。
「久しぶりに蛍光灯が全部点いている部屋で話をしますよ。」
とは、どういう意味が解るだろうか。
その大企業の中堅の社員さんのおっしゃるには、
「厳しい経費節減令で、カラーコピーはもちろんずいぶん前から禁止で、
部屋の蛍光灯も本当に必要な分しか点けてなく、
蛍光灯の管自体がかなり抜いてあって、
スイッチを全部入れてもそんなに部屋全体が明るくはならない。」のだそうだ。

 

もちろん派遣会社からのスタッフも期間契約社員もすっかりいなくなって、
正社員の所得も20~30%は確実に減っているとおっしゃる。

 

そんな話を聞いていると、蛍光灯が全部点いている我が社の会議室が恥ずかしくなった。

 

GMが事実上倒産した。
世界最大の会社の一つが、金融ゲームの破綻を突端とした不況の中で倒産した。
ここに至るまでの放漫経営と、強い労働組合が譲らずに高い人件費が高コストを産み、
技術開発がおざなりになって、
「売れない車を、給料が世界一高い労働者が造る」というような、
出口のない悪循環が止まらず、一挙に来た不況の前にひとたまりもなかった。

 

企業力とは、
商品の魅力と品質の高さを作り出す力と同じくらい
コストと闘う力が重要である。

 

経済全体が循環的に伸びるバブルの時代では、
売上さえ伸ばせば何とかなったが、今の時代は収縮する経済の世界になっている訳で、
コストとの闘いは、より重要性が大きくなっている。
私のようにイケイケドンドンのタイプが最も苦手とするところだ。

 

「久しぶりに蛍光灯が全部点いている部屋で話をしますよ。」
あの言葉を肝に銘じて、
逃げ出さずにコストとの闘いを真剣に始めなくてはならない。

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