谷 好通コラム

2009年10月06日(火曜日)

2323.女手一つで四人を育てる

お葬式に列席したあと東京に戻る新幹線の中。

 

今日のお葬式は私のお袋の姉にあたる叔母さんで、
93歳で亡くなられた。俗に言う大往生だ。

 

叔母さんは二男二女、四人の子供を持っておられた。
しかし、若い時にご主人が亡くなり、
その後、四人の子供を女手一つで育てた。
新幹線の保線工事で、最終列車が通ったあとの深夜働いた。
男に交じって女手で土方をやったのは、
子供四人を育てるのには男顔負けの仕事をしなければならなかったのだろう。
そのご苦労は、想像に難い。

 

四人の子供さん、つまり私の従兄弟(いとこ)は、
夜、兄弟だけで寝たのだろう。

 

四人とも立派に育って、苦労の影などまったく見えない人一倍明るい人ばかり。
叔母さんは四人の子供食べさせるために精一杯働き、
子供をかまってあげる暇もあまりなかっただろうに、
子供は四人とも明るく立派に育った。
長男は大きな会社で定年まで勤め上げたし、次男は独学で司法書士を取り、
立派に司法書士事務所を経営している。娘さんは東大生だ。
私の会社も彼に造ってもらった。
長女、次女は、真面目な夫の元に嫁いで、立派に子供も育て上げた。
申し分のない兄弟で、叔母さんの長いご苦労の結晶である。

 

叔母さんの人生は、幸せであったのではないだろうか。

 

若い時に夫を亡くし人並みはずれた苦労をしてきた叔母さんの人生は、
苦労をした分だけ損をしたのであろうか、否、
苦労をした分だけ得たものもきっと大きく深かったのではないだろうか。
その四人の子供も、お母さんの苦労の分だけお母さんから愛され、
お母さんを愛し、
幸せであるのではないだろうか。
端から見ただけの勝手な感じ方かもしれないが、そんな気がしてならない。

 

今の世の中は豊かになって、
お母さんは子供に専心し、
何不自由なく育てるのが当たり前になった。
しかし、この兄弟のように、
小さい時お父さんが亡くなって、
お母さんが男まさりに働いているので、
ほとんどかまってもらえない上に、
夜を兄弟だけで寝て、必死になって働くお母さんの背中を見て育った人たち。
それが立派に良く育って、社会人になり活躍しているのを見ると、
何が子供にとって幸せなのか、
どんな人生が幸せなのか考えさせられてしまう。

 

「楽をして金が儲かる。」ことを最上として、
自分の損得勘定が価値観の中心であり、
自分の置かれた立場を利して、
働きもせずに1億円ものお金を吸い上げた人間を知っている。
そんな親に育てられた子供とは、
夜、兄弟だけで寝ていた子供よりも、
生活は贅沢でも、
ひょっとしたら、不幸なのではないか。

 

楽して金が儲かるとは、与えずに得る事、つまり奪う事である。
奪う事で人間は幸せになれるのか。
そんなさもしい人生が幸せとはとても思えないが、
本人がそれでいいとしたら、価値観の違いなのであろう。

 

自分の青春を精一杯苦労して、
立派に子供を育て上げ、大往生した叔母さんは間違いなく幸せであったと思う。
そんな幸せな人に育てられた四人の子供も幸せであると思う。

 

自分の残り少ない兄弟を亡くしたお袋の寂しそうな横顔を見ながら、
感慨深かった。

 

 

あと30分で東京に着く。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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