2010年08月06日(金曜日)

2570.お互いに相手を知らないこと

昨日、名古屋市内のホテルで十数人の初対面の人たちに話をさせていただいた。
比較的若い経営者あるいはそれに近い人たちの勉強会で、
一時間ほどの話である。

 

私は一年にたぶん40回ほどは集まっていただいた人たちの前で話をする機会がある。
キーパープロショップ研修会が多いがそうでない場合もある。
話はいつも洗車やコーティングに関わる話で、
いわゆる自分の仕事の話である。
集まっていただく方も仕事に関わっている人達なので、
ほとんどの人は私を知っているし少なくとも私たちの仕事のことは知っている。
私も何度もお会いする人が多く、かなりの人がお互いに知っている間である。

 

しかし今回は、
私が会社の代表であることは、事前の案内で知っていても、
キーパーをご存じない方もいっぱいいるので、
私の会社が何の会社であるかを知らない人もいるし、
だいいち私自身のことを知っている人はまずいない。
私も、皆さんのことをまったく知らない。
お互いに知らないという人達の前で話をさせていただくことは、
ひょっとしたら、私は初めてだったかもしれない。

 

せっかくのお時間をいただくのだから、
皆さんに何かお役に立てるような話をしたいとは思うのだが、
どんな話をさせていただいたらいいのか今回は長い期間迷った。
事前にある程度は考えた話題はあったのだが、
いざ、皆さんの前で話を始めたら、会社の歴史のようなことを話し始めてしまった。
聞く側としては他人の会社の歴史話なんてつまらないものだ。
私も聞く側としてそんな話を聞いたことがあるが、
正直言ってつまらなかった。
それを分かっていて、
なぜ私はそんな話を始めてしまったのだろう。

 

相手に何かを伝えようとした場合、
相手が初めての人ならば、まず自分が何者であるかを自己紹介するものだ。
聞く側からすれば、何者か分からない人間が、
どういう意味を持って話をしているのかを分からないまま話を聞いても、
その人の言っていることは理解できない。

 

講演会などの場合は、演者はたいてい有名な方であって、
その人が何者であって、普段どんな話をしているのか分かっている場合が多く、
演者は相手が自分をある程度知っていることを前提に話をすればいい。
というよりも、みんなが知っている人が演者でなければ人は集まらないので、
講演会自体が設立しないことになるが。

 

しかし今回は講演会でもないし、もちろん私は有名でもなんでもない。
だから、延々と自己紹介のように会社の歴史を話し始めてしまったのだろう。
その中で、何らかの役に立つ話があればとも思っていたのだが、
結局は自分の会社の歴史を延々と話したことには違いない。
話をしている途中で「あーこんな聞いてもつまらないだろうな」と自分で感じた。
一時間話をさせていただいて、
話の軸にしたかった部分は最後の10分程度だけで、
私は、自分の会社の歴史と会社の案内を延々とやってしまったことになる。

 

いつもお互いに知っていることが前提の人達に話をさせていただいていると、
お互いにまったく知らない人達に何かを伝えたいと思ったら、
まず、自己紹介をすべきではあるのだが、
それはあくまでも本題の前提を作るだけの短い作業であるべきなのに、
延々とやってしまった愚は、
何か変に自慢話しているようで後ですごく恥ずかしかった。
しかし、いい経験をさせてもらったし、
今後こんな場面があるとしたら、同じ愚を冒さないいい勉強になった。

 

しかしそれにしても、事前にお互い知っているということは、
ものすごく楽なことであるし、
同じ量のコミュニケーションを持ったとしても、
伝わることの量と質がまるっきり違うことをしみじみ思った。

 

一時間の私の話の後、
食事をしながらの質疑応答では、
ビールの力も借りて、話がずいぶん盛り上がったのは救われた。

 

参加者の一人がこうおっしゃった。
「正直、話は面白くなかったけど、こうやってざっくばらんの話は本当に面白い。」

 

私はハタと思った。
「今度こういう場面があったら、
話をする前にビールを一本飲んでおくといいかもしれない・・・・」と。

 

 

冷や汗ものの会のあと、
ああ、急に富士山が見たくなった。

 

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