谷 好通コラム

2010年08月14日(土曜日)

2583.キーパーエピソード(7)ハイブリッド構造のボディガラスコーティング

[発想の転換、低分子量ガラス皮膜]
ドイツSONAXのDr.ピッチと共同で作ったボディガラスコーティングは、
日本で出回っているものとは違うドイツ発の原料に因がある独特のものであった。

 

ガラス質のコーティング皮膜を作る原理は、
水ガラスが空気中の水分と接触して脱アルコール反応を起こして、
固体のガラスになる現象を使ったものだが、
普通は無限大に連続反応して巨大な高分子量を持つ固体のガラスになるが、
Dr.ピッチはこの連続反応をナノのレベルでコントロールし、
比較的低分子量の皮膜を作るものだ。

 

こうすることによって、塗装が持っているナノレベルの凸凹の中に入り込んで、
アンカー効果(錨のように繋ぎ止める効果)で、
皮膜を塗装に密着させることが出来る。
コーティングのツヤも一段と良くなる。

 

従来のガラスコーティングでは「シランカップリング」という方法で、
本来くっつかない性質の有機物である塗装と無機物のガラスのコーティング剤を
強引に分子的にくっつける。
この方法だと塗装とガラスが一体になってしまい、
何かあっても元の状態に戻すのが難しくなってしまい作業環境も非常にシビアになる。
それを皮膜の分子量を低くすることで、
安定した品質と、何年間も付き合っていく中でのコントロールに
自由度が出せるようになったのだ。
分子量を高くして一方的に強さだけを追求するのではなく、
発想の転換で分子量を低くし安定した施工で品質を安定させ、
ガラスが本来持っている無機質の良さを積極的に利用していく方法だ。

 

いずれにしても、
私たちが望んでいた理想のボディガラスコーティングが生まれたわけだ。

 

さて問題は「水シミ」だ。
ボディガラスコーティングはその皮膜が無機物で出来ているので、
紫外線や酸性雨などの攻撃に対する防御能力は非常に高くなるが、
水道水などに含まれているミネラルが固着して頑固な水シミが出来る。

 

[ハイブリッド構造のボティガラスコーティング]
SONAXと共同開発した新しいコーティングは、
分子量が低く設定されているので、ミネラルがくっつきにくくはなっているが、
もっと、根本的に水シミの固着を防ぐ方法を考えた。

 

その結果が「ある種のレジン(企業秘密)の皮膜」をガラス皮膜の上に乗せて、
二重構造、ハイブリッド構造にすることである。
このある種のレジンとは本来的には有機の性質なので
「水シミ」のミネラルが固着することがなく、
部分的に無機の性質を持っているのでガラスに密着することができる特殊なもの。

 

[ハイブリッド構造でレジンを犠牲皮膜として使う]
無機質のガラスで、長期間にわたって塗装を紫外線などの攻撃から強力に守り、
その上に二重の構造として作ったレジン皮膜に
塗装とガラス皮膜の身代わりとなって傷む「犠牲皮膜」の役割をさせる。
ポリマーのピュアキーパーでは、
コーティング皮膜は塗装の身代わりであったが、
ダイヤモンドキーパーでは、
まず塗装の上にもっと紫外線などに強いガラス皮膜を乗せて、
レジンがその両方の身代わりとなって傷み、入れ替えられる役割を負うわけだ。

 

キーパーの本来の考え方がここで活きてくることになった。
(特許登録済み)

 

[5年耐久のダイヤモンドキーパー]
満を持してデビューしたのが「ダイヤモンドキーパー」
5年の耐久力を持ち、半年から1年のサイクルでメンテナンスを繰り返す。

 

ダイヤモンドキーパーのガラス皮膜には5年の耐久力がある。
1.塗装面からしっかりと汚染物質を「爆白」で取り除き、
2.完全ノンシリコンのポリッシュ「アクアポリッシュ(SONAX製)」で塗装を軽く磨く。
これはガラス皮膜が完全に密着するための作業であって、
マニアックな人のための鏡面研磨ではない。
3.その上で、乾燥した塗装の上にダイヤモンドキーパーのケミカルを塗っていく。
4.塗布後1時間くらい皮膜の硬化時間を取る。(乾燥時間ではない)
5.その上にハイブリッドレジンを同様に丁寧に塗って、丹念に仕上げる。

 

その間、約3時間から5時間。
お車を一日お預かりして施工する。

 

施工してから5年間、
「犠牲皮膜」としての「レジン」を入れ替える「メンテナンス」を繰り返す。
一般的にボディガラスコーティングは「水シミ」が固着して苦労するが、
ダイヤモンドキーパーは「レジン」の性質でその苦労から開放される。

 

非常に現実的であり実用的なボディガラスコーティングが完成した。

 

しかし、このダイヤモンドキーパーは、
キーパーの元祖であるピュアキーパーより技術を要することは事実である。
今までのように技術研修を開催していくだけでは、
きちんとした品質のダイヤモンドキーパーを世の中に提供し続けられるか心配であった。
そこで「コーティング技術認定制度」を作り、
資格を持った人がいる施工店を
「KeePer PRO SHOP」というサービスブランドとして認定することにした。
これは大変な作業と投資であったが、
あとになって本当に良かったと思える結果となった。

 

[1年耐久のクリスタルキーパーの登場]
ダイヤモンドキーパーを世に出してから約1年後。
新潟であるきっかけがあった。
(その出来事を詳しく書き始めたが、それを詳しく書くと、
クリスタルキーパー独自の原理の全貌が、分かる人には分かってしまうので、
まだ書くのは早いと考え、書くのをやめた)
(特許申請中)

 

方法は、
水を使った塗布方法でガラス皮膜を強制的に素早く硬化させて、
ダイヤモンドキーパーの皮膜より密度の低い皮膜を作ってしまい、
密度が少し低いレジン皮膜をかぶせてハイブリッド構造するのだ。
作業時間は、これによってうんと短縮され1時間30分から2時間程度となる。

 

こうするとダイヤモンドキーパーよりは耐久力が落ちるが、
しかし、ガラス特有の「透明感のあるツヤ」はしっかりと確保され、
もともとの低分子の構造によるアンカー効果で密着度も確保される。
紫外線などに対する耐久力もポリマーコーティングよりははるかに高い。

 

紫外線に対する耐久力は公的機関による試験で3年弱と測定された。
これだけの耐久力があれば「1年耐久」を世の中に謳っても大丈夫と判断した。

 

「1年耐久、ノーメンテナンスのクリスタルキーパー」の誕生だ。
これがユーザーのニーズぴたりと合って、今大ヒットを始めているのだ。

 

私たちは消費者アンケートをたびたび実行するが、
その回答の中に、
実は「クリスタルキーパー」のようなコーティングの登場を待っていたことに、
気がついたのは、クリスタルキーパーを施工したお客様の声をたくさん聞いてから
アンケートの回答を読み直してからであった。

 

「ニワトリが先か、卵が先か」のような出来事であった。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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