2010年10月14日(木曜日)
2630.マニュアルトークは逆効果、必要なのは本気の会話
先日何日かかけてキーパー選手権の入賞店舗を取材していて、
強く感じたのは「本気」と「会話」
どの店舗でも本気で、お客様の喜びを自らの喜びとしていた。
「SSで売っている商品は満足を与えられるかもしれないが、
感動を与えることは出来ない。
洗車・コーティングはお客様を感動させられることが出来る。だから大切なのです。」
「何が嬉しいって、仕上がった車を引き渡す時のお客様の喜ぶ顔を見ることです。」
「われわれ物販業で、お客様から『ありがとう』って言ってもらえる商品って、
なかなかないんですよ。洗車・コーティングはお客様からの信頼を作れるんです。」
「お客様から『わー、きれいになった』って言われるとたまんないですよ。嬉しい。」
みなさんお客様の喜びを自らの喜びとして仕事の糧にしていらっしゃる。
商品の材料と技術を提供している我々としてもこんなに嬉しいことはない。
そしてこんな言葉もいただいた。
「マニュアルどおりのセリフなんて返って逆効果なんです。必要なのは本気の会話です。」
この言葉は意味が深い。
私たちのキーパーラボのある店舗でこんなことがあった。
常連のお客様で、その方はキーパーラボに好意を持っていらっしゃった。
よく使っていただいていた商品は「快速手洗い洗車」だ。
「快速手洗い洗車」とは、以下のような経緯で作られた商品。
キーパーラボが洗車屋快洗隊として初めて立ち上げた時「極上手洗い洗車」が、
「すごくきれいなる。」非常に評判が良かったのだが、
いかんせん時間がかかる作業であったので、
急いでいるお客様、ササっと洗うだけでいいお客様には、
「もっと簡単でいいから、短時間でできる洗車メニューが欲しい。」
とのご要望もあって、
三年前に、洗車作業マニュアルを簡略化した「快速手洗い洗車」という商品を作った。
そのころに開発した「純水生成機 快洗RO」があったから出来た商品でもある。
実際にこれを洗車メニューに加えてみると、
ご注文いただく洗車のうち、「快速手洗い洗車」の受注率は約20%。
思ったよりも少ない受注率であったが、これはこれで意味があるとして続いていた。
その「快速手洗い洗車」をご愛用いただいていたお客様から
このWebサイトに投稿があった。
要約すると
「新しく店長が変わったら、快速手洗い洗車をしてもひどい状態だ。
ホィールはいい加減にしか洗ってないし、汚れが筋になって残っている。
拭き上げた後もボティから水はしたたっているし、
タオルの毛羽がボディにいっぱいついたままだ。
前の店長の時は、こんなことは全くなかった。
苦情を言ったら、その新しい店長は『会社の方針がそうなりました』と答えた。
お客様を大切にしているなんて、
言っていることとやっていることがあまりに違うのでないか。信用できない。」
というもの。
これは、私たちにとっても大問題であり深刻で、話し合った。
この新しい店長とは、誰もが認める非常にまじめな男で、
むしろ不器用といえるほどの男で、家族をすごく大切にしている。
彼が、手抜き作業をしたとは思えない。
よく調べると問題は複雑であった。
※要素1.
前の店長は、「快速手洗い洗車」を、
「快速手洗い洗車」と標準の「手洗い洗車」の中間的な作業マニュアルで実施していた。
前の店長の自主的な判断である。
お客様から見たらその方がいいと思ったからだ。
(問題点1-1)
作業マニュアルとは、作業の工程一つ一つに理由があるのだから、
店長の感覚的なもので、変更すべきではないのではないか。
あとの店長のことを考えると、この問題は深刻でもある。
(問題点1-2)
お客様視点でマニュアルに問題があり変更すべきと思ったら、
店長会などで「相談」すべきなのだが、
それが出来なかったのは店長だけでなく、
会社の会議の在り方や、コミュニケーションに問題があるのではないか。
※要素2.
新しい店長は、それを「快速手洗い洗車」本来のマニュアルに戻して実施した。
「快速手洗い洗車」とはそういうものだからと、ごく自然にそうした。
(問題2-1)
すでに前店長の元に行われていた作業が、本来のマニュアルから外れていても、
お客様からすれば、
その店においての快速手洗い洗車は
前店長の元に行われていた作業内容なのだから、
マニュアルから外れているからといって、無条件に作業を変えてしまうのは
お客様にとっては、商品が変わったことになる。
前の店長の時はやっていたことを、
新しい店長になったら、だまってそれをやらなくなるのは
マニュアルがどうであろうと、
お客様に対する裏切り行為であるのではないか。
前もってお客様に説明してご理解をいただくなり、
とりあえず、前の店長のやり方で作業を行って、
今後のこととしてでも、本来の作業内容のご説明をさせていただくべきであった。
※要素3.
私たちの店舗では全店「純水機 快洗RO」を導入していて、
洗車の拭き上げ作業の前にミネラル分をほぼ完全取り除いた「純水」を掛けている。
「純水」は車の上でべたべたに濡れたまま乾いてしまっても全く水シミにならない。
普通の洗車後に丁寧にタオルで拭き上げるよりきれいに仕上がるくらいだ。
だから「快速手洗い洗車」では、
拭き上げ前に「エアーガンで細かい所に入り込んだ水を追い出す。」工程を省いている。
お客様が見た「水がしたたっている」のは、
純水がボディの隙間からしたたっているところだろう。
(問題3-1)
キーパーラボにおける洗車はすべて「純水」を使っているので、
快速手洗い洗車の拭き上げを、エアーガンの水追い出し作業なしで行っているが、
それで、水がしたたってきたとしても大丈夫であることが、
店内にもメニューにも全く案内されていないのは問題である。
※要素4.
アルミホィールの汚れがきちんと落ちていなかった。
(問題4-1)
私たちはホィールの洗浄に「ブレーキダストクリーナー(略してB.D.C)」を使う。
これはB.D.Cダストに多く含まれている錆びた鉄粉を安全に溶かすもので、
洗車の前にスプレーでホィールに掛けて、あらかじめ汚れを溶かす。
汚れが解けてきてから高圧水をかけると、汚れはほとんど取れる。
それでも掛け方が悪いと、少しまだらになることがある。(もちろん簡単に取れる)
普通の手洗い洗車の場合はそれから車体の洗車をして、
仕上げの段階でアルミホィールをタオルで拭いて仕上げるが、
快速手洗い洗車では、タオルでの拭き上げをしない。それでもほとんどきれいになるが、
今回の場合のように汚れが筋になっている状態だったのは問題。
(問題4-2)
「快速手洗い洗車」では、ホィールの汚れを洗車前のB.D.Cのスプレーと高圧水で
汚れのかなりの部分を落とすが、拭き上げるところまではやらないことを
お客様がわかるように案内してないことは問題。
※要素5.
今までと違う仕上がりお客様が抗議をされた時に、
「会社の方針が変わりました。」と言って、責任逃れをした。
(問題5-1)
「会社の方針が変わった」とは、ただの責任逃れで許されないことだ。
あるいは「本来の快速手洗い洗車はこういう洗車なのです。」と言ったとしても、
それはお客様には関係のない話であって、
今までと同じものを注文して違う仕上がりになったのだから、
怒るのは当然であり、その説明はまったく方向違いで間違っている。
(問題5-2)
ここは大きく重大な問題。
「自分は会社の作業マニュアルで快速手洗い洗車をしたのだから、悪くない。」
「悪いとしたら前店長であり、自分は悪くない。」
と今の店長が思ったであろうこと。
自分が悪いとか悪くないとかなんて、
お客様にはまったく問題のないことであって、
大切なのは、
お客様が自分の期待を裏切られた事実がそこにあることに気づかない事。
(問題5-3)
最大の問題点
新しい店長は、会社のマニュアルを優先して、
実際にお客様が今まで買っていた「快速手洗い洗車」の仕上がりで裏切られたことに、
なぜ怒っているかを、理解できなかったことよりも、
“理解しようとしなかったこと”。
我々サービス業は、まずお客様の話をよく聞き、お客様を理解する所から始まる。
お客様を理解した上で、はじめて正しいご提案が出来るのであり、
お客様を気遣い理解するから、
お客様にこの店とサービスを気に入っていただき、
この店を繰り返しご利用いただける。
たとえ問題が発生しても、お客様のおっしゃることを理解できて初めて解決できる。
お客様を心から受け入れ、
理解しようとするから「会話」が出来る。
一方通行のマニュアルトークは逆効果であるというのは、
お客様の意志に関係なく、こちらが一方的に話すからだ。
一方通行の話は「会話」ではない。
会話とは、お互いの意志のキャッチボールである。
一方的に話をする人が、自分のためを考えてくれているとは誰も考えないだろう。
誰も自分を理解してくれたとは思わないだろう。
自分のためを考えてくれない、理解してくれない店を、利用し続けようとは思わない。
少なくとも、サービス業においてそれは顕著であろう。
私は、この会社をみんながお客様のことを真剣に考えてくれる会社にしたい。
みんなでお客様のことを考える会社でありたい。
それが、まったく逆のことが実際にあったこと、
今もあるかもしれないことは、問題は実に深刻なところにあると考えました。
もう一つ、
「ホィールが筋になって汚れていた」「タオルの毛羽がついていた。」
これは「快速手洗い洗車」の作業マニュアルそのものに間違いがあるのかもしれない。
しかし、
お客様との関係がマニュアルトークは逆効果で、
会話こそが大切であるのと同じように、
洗車も、コーティングも、「きれい」という定型のない商品を作り上げるものだから、
作業マニュアルに従うだけではなく、
自分の目と、自分の感性を活かして、
お客様を理解した上で、お客様から見た「きれい」を作り上げる必要がある。
最後に、この新しい店長は、
家庭を大切にし、愚直にまじめで、
人を裏切ったり、だましたり、さぼったり、おざなりにする男ではありません。
私は人間として彼を信じています。
ただ、会社からの指示を素直に聞き、それを実行しようとしたのはともかく、
お客様を気遣い、お客様の気持ちを感じ、
言葉を良く聞き、受け入れ、理解することを、まだ身に付けきれてなかった。
それは、もちろん私たちの責任です。
申し訳ありませんでした。
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