谷 好通コラム

2017年01月15日(日曜日)

1.15.自ら偏見をも克服した偉大な国がなぜ

今日の西日本には大雪警報が出ていて
朝早く、”出勤停止”の指示が飛んでいました。
外にも出られず、じっとしているのでいろんなことを考えます。

 

 

オバマ大統領が2期8年間の任務を終えて
次期大統領に代わる直前の演説をテレビで少し見ました。
オバマ大統領は自ら掲げた理想を実現しようとして、
いくつもの大きな成果を上げつつも、
理想を妨げる現実と戦い、妥協して、
歯切れの悪い結果を残していることも事実で、
そこが今回の選挙で彼の民主党が敗れた要因の一つなのでしょう。
しかし、いずれにしても、
彼は人類全体の共存を視野に入れた理想を持ち続けた政治家だった。

 

それに対して、新大統領となるトランプは、
自分の、あるいは自分たちの損得を基準に物事を考え判断する人のようだ。
自分たちにとって損な事は悪い事で、
自分たちが得する事が良い事。
これをビジネスで成功した者の論理と彼は言っています。
たしかにそのビジネスが相手のある客商売ならば、
買うか買わないかを決めるのは相手であるお客様なので、
商売の商品が相手にとってどうなのかが商売の肝心なところなので、
みんなのことを考えなければならない政治と相通じるところがあります。
しかし彼のように、
不動産投資やギャンブルの類のビジネスならば、
自分の損得をかぎ分け、
損得を基準にして先を見通すことが成功の鍵なのだろうから、
自分が得する分、相手が損をするのだから、
これは政治ではなく、エゴであり、むしろ政争であり、奪い合う戦いでしょう。
圧倒的な武力を持った国の指導者が、エゴを政治の判断基準に持つと、
果たしてどんなことになるのか。怖いものを感じます。

 

しかし考えてみると、
明治維新の三年前に終わったアメリカの南北戦争で、
奴隷制廃止を唱えた北軍が勝つまで、
約150年前まで、
黒人は白人の奴隷であった。
奴隷には人格は無く、奴隷は主人である白人の持ち物であった。
たった一世紀半前まで、奴隷であった黒人は”物”であったのだ。
長い間、黒人は奴隷であり、
白人はそれを殺しても犯しても罪にならない主人であった。
それは長い間、アメリカにおける文化であり、
人々の価値観の奥底に植えつけられた根強い偏見になっていました。
もちろん、
生物学的にも、知能的、文化的においても、あらゆる面において、
黒人は白人に劣っていることはなく、
当然、白人は黒人を奴隷にする権利など持っていない。
しかし武力とエゴで白人は黒人を凌辱し、人をモノに貶めた。

 

そんな暗い歴史を持ったアメリカは、
自力で偏見を克服し、南北戦争で
自ら闘い、勝ち、奴隷制度そのものを克服し、
すべての黒人、奴隷を解放して、
黒人をモノから人に取戻したという輝かしい歴史を持っています。
明治維新にほぼ同じ頃のことです。

 

その結果、イエローもホワイトもブラックも平等の立場に混在した
偏見を乗り越えた
素晴らしい文化を作り上げたアメリカは偉大な国である。
しかも、
150年前までは奴隷であり自ら虐げてきた黒人の一人を、
その持っている知性と素晴らしいリーダーシップを評価して、偏見を捨てて、
指導者として大統領にまでした奇跡の国である。

 

それがなぜ
エゴを前面に出した白人を大統領にしたのか、
自分たちの損得を第一に考える価値観をよしとする確信的エゴを、
なぜ自らのリーダーとして選んだのか。
自由競争の果てに出来た闇は深そうです。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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