2021年07月30日(金曜日)
7.30.昔々、ソアラに乗った町工場のお嬢様が、車から離れて・・
昔々、まだ「LABO」の前身の「快洗隊」も生まれていなかった大昔、
私が横浜で「磨き」と「コーティング」を憶えてきて、
刈谷市に買った132坪の土地で「クリーベースWITH」という店を造り、
そこで洗車とコーティングとタイヤの店をやり始めたころの事です。
だから、たぶん30年近く前の事です。
その頃、私は「磨き」の面白さに目覚めてしまい、
朝から晩まで、ポリッシャーを持って、自分で”研磨”に没頭していました。
ポリッシャーとコンパウンドを着けたバフで自動車の塗装を磨くと、
たとえ古い車でも、新品の塗装のようにツルツルになって、ツヤ出るのは、
実に気持ちが良く、腕の立つ職人になったような気がして、
自分の「研磨」が自慢で仕方がなかった。
だから、コーティングというものは、
その下地作りの「研磨」が重要なのであって、
コーティング剤なんかはおまけであって、
研磨さえキチンと出来ていれば、
その上には何を塗ってもいいとさえ思っていたし、そう言っていた。
だから、たまに入ってくるコーティングの仕事があったら、
社長である私が腕によりをかけた「研磨」をするのが当たり前だと思っていた。
ある時、地元のちょっと大きな鉄工所の娘さんが、
親御さんから買ってもらった「ソアラ」に乗ってきて、
うちの店が出したチラシにあった「○○●シールド」というコ₋ティングが、
「すごく良さそうだから、やって欲しい」と言われて、
新車から5年経った「ソアラ」を、張り切って、磨いた。
多分、徹夜で磨いたような気がする。
車体にいっぱいついていた極細の洗車キズも、意地になって一本残らず消した。
だから、10時間くらいは磨いたのだろうか。
塗装を斜めに透かして見て、誰も気が付かないような傷も全部消した。
完璧に磨き上げて、簡単にコーティング剤を塗り、
次の日の朝、ソアラを取りに来たお嬢様にって、
「どうぞ、ご覧ください。傷一つなくなって、新車以上になっています。
どうぞ、近くに来て、ちょっと斜めに見るとキズが無いのが見えるはずです。」
私はお嬢さんが
自分の車が完全な無傷状態になっていることに、
感激して、ものすごく喜んでくれることを、期待して、
近くに寄って、塗装の無傷状態を見てくれるように言ったのです。
ところが、お嬢様は、
車に近づくどころか、むしろ車から下がって行って
車全体を見て「わぁーすごいキレイになった」と喜んでいる。
それを見て私は、
「そうじゃなくって、もっと近くから、こうやって斜めから見て、
細かい傷がキレイに無くなっているところを見てください。ずごいですよ。」
と一生懸命言うけど、
お嬢様は、車にくっつこうとはしない。車全体を見ようとする。
それを見て、
私は思った。
「あ~このお嬢様には、この研磨のすごさが解らないんだ。豚に真珠だな。」
そう思いながら、
ふと、気が付いた。
このお嬢様はせっかく喜んでいるのに、自分は今、豚に真珠だと思った。
間違っているのは、自分だ…。
仕事は相手の為にするから、その相手からその報酬をいただける。
仕事は相手の為にすることに価値がある。のは当然だが、
私は「研磨」で自己満足に陥って、
その相手を「豚に真珠だ」と思った。もちろん、私は間違っている。
それで目が覚めた。
それで、私自己満足の研磨の世界から抜け出して、
KeePerの基本を造り上げて、多くの人に受け入れられて、今がある。
ソアラのあの町工場のお嬢様が、車から離れていって見てくれたおかげなのです。
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