谷 好通コラム

2025年02月14日(金曜日)

02.14. 10年前、上場した翌日に読んだ話「メキシコの漁師の話」

10年前、東証マザーズに株式上場して浮かれていた翌日
こんな話をメールで送ってきてくれた人がいました。
キーパープロショップ発祥の人、酒井さんです。

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「メキシコの漁師の話」

 

メキシコの田舎町。
海岸に小さなボートが停泊していた。
メキシコ人の漁師が小さな網に魚をとってきた。
その魚はなんとも生きがいい。
それを見たアメリカ人旅行者は、
「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの」 と尋ねた。

 

すると漁師は
「そんなに長い時間じゃないよ」と答えた。
旅行者が 「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。おしいなあ」と言うと、
漁師は、「自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だ」と言った。

 

「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」と旅行者が聞くと、
漁師は、
「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。」
「戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。」
「 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…
ああ、これでもう一日終わりだね」

 

すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。

 

「ハーバードビジネススクールでMBAを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。」
「いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。 それであまった魚は売る。」
「お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。」
「その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができるまでね。」
「そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。」
「その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキシコシティに引っ越し、
ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。」
「きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」

 

漁師は尋ねた。
「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」

「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」

「それからどうなるの」

「それから? その時は本当にすごいことになるよ」
と旅行者はにんまりと笑い、
「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」
「それで?」
「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、」
「日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、」
「子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、」
「夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。

どうだい。すばらしいだろう」

 

 

人生は遊びではないですが、労働でもありませんよね。
遊びと仕事の違いは、遊びは自己満足なのに対して、仕事って「人の役に立つ事」ことですよね。
もちろん、仕事には利益が必要ですが、その度合いはその仕事の目的によって違うだけです。

 

金儲けのために行う労働は、結局、メキシコの漁師のような話になってしまいます。

 

仕事は
二人称三人称でないと成り立たないもので、つまり人と関わる事すべては『仕事』なんですね。
そういう意味で、目的がある訳ですから、
社長は、引退なんてできない!一生仕事をするんだろうな〜と思っていましたよ。(笑

 

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そうですね。
仕事には、意識、無意識にかかわらず、”目的”があります。
その結果、たくさんの人から支持をいただいて、仕事がうまくいって、
株式の上場までさせていただきましたが、
そこから得られたお金やもので、
“楽”をしようとか、”贅沢”をしようと一応、色々考えたのですが、
そのどれもが欲しいものではないことに気付いて、イライラしました。

 

しかし、
仕事そのものに目的があるのだから、
“働いて”、それでいいのです。

 

たぶん、死ぬまで現役で馬車馬の様に、働いて、それでいいのでしょう。
「メキシコの漁師の話」で、また納得しました。

 

「死ぬまで馬車馬の様に、働いて」と口に出すと、涙が出てきます。
だから、それがいいのでしょう。
たぶん、私はそうしたいのでしょう。

 

 

以上、10年前、上場して三日後に私が書いたブログの一部です。

 

あの時に比べると、株価は確実に10倍以上になっていて、
株式の配当もあって、私の所得も何倍かになって、
昔に比べたら裕福になりました。
それに比して私は贅沢をしているかと言えば、そんなことはありません。
相変わらず、仕事をしているのが一番楽しいようで、
休みの日も、相変わらず苦手です。
食べるものも相方の作ってくれる食事は野菜中心で、
高級食材とはとんと縁がありません。
みんなと飲みに行っても相変わらず火鍋程度です。

 

自分の価値基準は、10年前も、
たぶん50年前もほぼ変わっていません。
あの頃から、
私はみんなと働いていれば十分に満たされていて、
今も、「死ぬまで馬車馬の様に、働いて」と口に出すと、涙が出てきます。

 

本当にそうしたいのでしょうね。

 

博多に向かう新幹線の中から「岡山」での夕日

 

 

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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