2005年10月19日(水曜日)
1270.社内規則の廃止!
朝は失敗であった。
朝寝坊をしてしまったのだ。
札幌のスタッフが朝八時にホテルに迎えに来てくれる予定になっていたのに、
その八時に、専務からの電話で目が醒めた。
北海道はもうすっかり涼しく、
暖かいお布団がとっても心地良くて、寝坊をしてしまったのだ。
こんなことは珍しい。
記憶の限りでは、上海のホテルで一度こんなことがあったが、
あれ以来である。
三日前に切開した腿の裏側の傷はもうすっかり痛くない。
しかし、二日間張りっぱなしのガーゼを押さえている絆創膏に、
皮膚が少しカブレてきたようで、かゆい。
午前中の仕事は、一生懸命であったが、
果たしてうまくいったものかどうか自信が無い。
専務たちは、良かった、面白かったというが、
なにせ久しぶりであったし、しかし悪い癖は相変わらずであった。
イカン、イカン、こんなことではイカンのだ。
午後の仕事は別なところでこなして、
さぁ夕方。
今日は本当に珍しく御接待を受ける事になっていた。
私の会社では、接待を受けることも、することも、ほぼゼロに近い。
私を含めて接待費ゼロの運営を続けている。
その会社の代表である私が接待を受けるなど、
もってのほかなのであるが、
「谷さんは、札幌まで来て、ずっととんぼ返りばかりしている。
もう3年以上もその連続だ。
たまには食事ぐらい付き合ってくださいよ。
接待とかそんな物ではないですから。
たまに食事ぐらい付き合わないのは、かえってヘンですよ。」
そう言われると、たしかにそんな気もして、
本当ならば今日の最終便で、名古屋に帰る事が出来る日程であったが、
あえてもう一泊し、
初めてその会社の担当役員の方と夜の食事をする事にしていた。
札幌の夕方の空は空気が透き通っていて、
とてもきれいであった。
行ったのは「サッポロビール園。」
札幌駅に近いサッポロビールの工場の跡地に、
古い工場の建物を生かして作られた観光用のビール園である。
すばらしいレンガ造りのビール工場の建物。
中は、ビール工場の雰囲気はまるでなく、
清潔で、ちょっとレトロッぽい造りであった。
飲んだのは当然、ビール。
ここでしか飲めない何とかという生ビールと、
窒素を混ぜたクリーミーな泡の黒い生ビールと、
普通の黒ラベル生ビール二杯(三杯?)。
小ジョッキで頼んだのだが、普通の店での中ジョッキの大きさで、
これだけで随分酔っ払った。
食べたのは、ラムのじゃんじゃん焼き(チャンちゃん焼きとも言うそうだ)
野菜がたっぷりで、柔らかいラム肉がとても美味しかった。
それに焼きたらば、玉ねぎスライス、ラーメンサラダ、身欠きにしんの玉ねぎ和え、
いくらおろし(専務の注文)、行者にんにくのソーセージ、
そして、
途中で相手の役員さん(I常務)が頼んだのが、「ししゃも」。
シシャモ!
・・・・
私の会社にも色々規則があるが、ほとんど常識的なものでしかなく、
みんな自分の判断で、あまり規則を気にすることなく
比較的自由な雰囲気の中で仕事をしている。
しかし、規則集には明記されていないが、
暗黙の伝統的規則として、
「社長の前で“シシャモ”を食ったら、文句なしに、即、懲戒免職。」というのがある。
私が、シシャモが大嫌いであることを、
冗談半分、本気半分で出来た影の規則なのだ。
そのシシャモをI常務が注文したのだ。
隣の専務が「おお~~っ」と驚いている。
しかし私は「ほぅ、いいですね~」と澄ました。
以前、聞いたことがあるが、
シシャモは北海道の本物のシシャモと、輸入物のニセ物シシャモがあって、
居酒屋などが出すのはそのニセ物シシャモであり、
本物のシシャモとは、見た目は似ていても、味はまったく違うものだというのだ。
約1年前にこのコラムを読んでいただいている方々のご招待で、
料理屋さんにご招待いただいたとき、
その本物のシシャモとやらを1匹だけ食べたことがある。
その時は、かなりの勇気を持ってシシャモにぱくついたのだが、
シシャモを食べていること自体が、とても異次元的なことで、
味まではよく分からなかったのだが、
そのあと、気持ちが悪くなったわけでもないし、吐いたわけでもない。
本物のシシャモは大丈夫なようだ。
その時の記憶が残っていて、
案外、私が大嫌いなあのシシャモは、ニセ物のシシャモであって、
本物のシシャモは大丈夫なのかもしれない。
そして、北海道の本場で出すシシャモは本物のシシャモであるに違いない。
そう思って、I常務が注文したたぶん本物のシシャモを、
もう一度食べてみようと思ったのだ。
出てきたのが、このシシャモ。
一口、頭からかじってみた。
・・・うんっ? おいしいじゃん。
二口目、ぜんぜん大丈夫である。
もう一匹、手に取った。
ぱくつく。
いやっ、ぜんぜん大丈夫だ。おいしい。
私は食べ物の中で唯一苦手であったシシャモを食べられるようになった。
かくして、
アイ・タック技研の伝統的(影の)規則
「社長の前で“シシャモ”を食ったら、文句なしに、即、懲戒免職。」は、
めでたく廃止となったのでした。
社員諸君。
これからは、私の前でもどんどんシシャモを食べてください。
出来たら、私にも一本分けてください。
ただし、
“本物のシシャモ”に限りますよ。
あの規則は、めでたく廃止になりましたが、
新たに、
「社長の前で“ニ・セ・物・のシシャモ”を食ったら、文句なしに、即、懲戒免職。」が、
発令されたのです。
よろしいですか?
初めてお受けした札幌での御接待は、
I常務の暖かい人間性に触れたような気がして、とても楽しかった。
こうして、今日もいい一日がまた終わる。
しかし、それにしてもあれだけ苦手であった“シシャモ”という単語を、
何度も何度も書いていると、何となく胸がムカムカして気持ち悪くなってきた。
イカン、イカン。