2002年05月19日(日曜日)
421話 返事しない症候群
今日は朝早く起きて、7時40分発の札幌行きの飛行機に乗った
私はこのところ
飛行機のチケットを搭乗当日にカウンターで買う
その方が、予定が変更になった時に色々な面倒が発生しないからだ
チケットを購入していると、キャンセルするのに手数料がかかる
特割などを使っているとかなりの金額が戻ってこない
私の場合は、身障割引きを使うので手数料の金額は大したことはないが
やはりもったいない
ただし、予約だけを取り消して、「オープン」状態のチケットにすれば
手数料はかからないが
そのチケットの存在をうっかり忘れてしまうと、3ヶ月で無効になってしまう
何度か、期限ぎりぎりで思い出して、慌てて使ったことがある
電話で予約をして
当日カウンターでチケットを買って、そのまま飛行機に乗る
予定に変更があった場合は、電話で便の変更とかキャンセルをすればよい
(身障割引だから、そんな方法でも安く乗れる
特割を使う普通のスタッフは、もう少し話がややこしくなる)
私の場合、それが一番便利な方法
この方法の唯一の欠点は
空港に着いてから、航空券販売のカウンターに行かねばならないことだ
自動発券機では、身障割引きでの購入が出来ないので
いちいち窓口に行って、係員の人から直接買わなくてはいけない
航空券販売カウンターの前に順番待ちをしていると
必ず、若き女性スタッフが近寄ってきて、こう言う
(スタッフ)
「ご予約が済んで見えるのでしたら、自動発券機が使えます
よろしければ、ご案内致しますが」
(私)
「イエ、けっこうです」
(スタッフ)
「機械の操作は簡単です。よろしければお手伝いしますが」
(私)
「割引を使いますので」
(スタッフ)
「何か特別の割引ですか?」
私
「はいっ!」
又は
「身障割引です」
若き女性
「あっ、失礼しました。」
この会話を毎度やらなくてはならないのは、いささかうんざりする
航空券発売カウンターで、係りの人とやり取りをするのもけっこう面倒だ
マニュアル通りの手順で
マニュアル通りの言葉が淡々と続く
係りの人によっては、実に心のこもった感じが良い方もいるが
大抵はマニュアル通りをこなしているだけ
イレギュラーなことが入ると、いとも簡単に破綻する
本日のトラブル
札幌行きのチケットを買うついでに、明日帰ってくる飛行機の予約をしようと思い
カウンターの上にいつも置いてある時刻表を見ようと思ったら
6月以降の時刻表だけで、5月の時刻表がない
スタッフ「ご希望の時刻を言っていただければ、こちらでお調べします。」
私が「いや、時刻表を見てチョッと考えたいのだけど、5月のは、もう置いてないのですか?」と聞いたら
係の女性は、返事もせず、ムッとした表情で黙って立ち上がり
どこかに行った
戻ってきて
「名古屋からの発着便だけの時刻表ですが、これでいいですか?」
と、小さな時刻表を差し出した
「あの~、5月の時刻表はもう置いてないのですか。と、“聞いた”わけで
その質問に返事もせずに、
これでいいですか?と言うのはヘンだよ。
まず質問に答えないとイカンよ。」
彼女が紅潮していくのが分かる
お化粧が厚いのか、顔が紅くなるのは分からなかったが
目と首と耳が紅くなったのがよく分かった
その後は、決まったマニュアル用語を、ものすごい早口で並べ立てていく
「落ち着きなさい」と、思わず言ったほど
“返事をしない症候群”
自分に何か気に入らないこと
あるいは、イレギュラーなことを言われると
返事すらしない
ホテルのカウンターでも、そんな人が時々いる
昔は、そんな時
「返事ぐらいしな!」と、言ったこともよくあった
接客の中で、“返事をしない”という行為は、チョッと救いようのないことで
話にならない
しかしこれは、接客をきっちりマニュアル化すると発生することがある
客とのやり取りが、マニュアル通りにいっている時はまったく問題ないのだが
チョッと外れると、もうだめになってしまうのだ
接客とは本来、客である相手を歓迎し、もてなすことを基本としている
“歓迎”も、“もてなし”も、もともと精神的なものである
歓迎する気持ちと、もてなす気持ちがなければ、成り立たない
CS(カスタマーサティスファクション)は、ここが原点だ
そして、そのレベルを一定の水準に引き上げるため
あるいは保つために
接客マニュアルというものが存在する
しかし往々にして、マニュアルが一人歩きしてしまい
原点であるところの、“歓迎”と“もてなし”の精神が、忘れられてしまうことがある
そんな時に
イレギュラーに対応できなくなってしまうのだ
つまり
“歓迎”と“もてなし”の精神が、根源に備わっていれば
マニュアルに想定されていないことが、たとえ不意に発生しても
相手の気持ちを大切にすることを基本に考えれば
対応は、社会的な常識に写してみれば簡単である
普段の生活の延長線上の対応で十分であろう
今回のケースであれば
「すいません。5月の時刻表、無くなってしまったんですよ。
名古屋発着だけの時刻表ならまだ有りますので、持ってきましょうか?」
これが、普通の会話であろう
たったこれだけの言葉で十分だ
ところが“歓迎”と“もてなし”の精神が欠けている場合
この人にとって
接客は、ある意味で「ただの仕事」であり
歓迎とか、もてなしも、マニュアル通りにこなす機械的なことなのかもしれない
だから
当月の時刻表がなくなったのは、自分のせいでもないのに
「なくなっちゃたの?」と聞かれたこと自体、理不尽であり
返事をする必要も、答える必要も感じなかったのだろう
自分の言葉によって
客である相手が、どのように感じようが、関係ないのである
「マニュアルをこなす」というのが「仕事」なのだから
機械の反応に似ている
仕組まれたプログラムに従って動くことが「仕事」であり
そのことによって、人間がどのように感じようが、まったく感知することは出来ない
接客のマニュアル化は、一歩間違うと
機械を作ってしまうことになる
私たちの店、若い子達だけできり回している
接客もマニュアルできっちり決めてある
お客様からの接客に対する評価はおおむね良いが
“歓迎”と“もてなし”の精神
この一番大切なところが、きちんと生きているかどうか
ここが肝心
常に自らを引き締めていかなくてはならない
北海道は、八重桜が満開であった
日本は広い!
ところが世間は狭い
朝一番の札幌行きの飛行機に乗ったら
私の前の席に高さんが乗っていた
何はともあれ
雲の間から垣間見た“乗鞍”
雲のかかり方、雪の残り方がなんとも良かったのだ
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