2003年06月08日(日曜日)
729話 「いらっしゃいませ」
私の住んでいる中部地方を本拠地とするカレー専門店FCで
「カレーCoCo壱番屋」というのがある
今では全国展開していて
北海道から九州まで、あたらこちらで見るようになった
もともとは、喫茶店を経営していたオーナーが始めたチェーンで
私たちの地方では、隅々にまで“CoCo壱番”がある
私たちが「今日はカレーを食べに行こうか」と言えば
「“CoCo壱番”に行こうか」と言っているのと同義語
それほどまでに“CoCo壱番”は
私たちの生活の中に定着している
そんなに“CoCo壱番”のカレーはうまいのか?
うまいから行くのか?
たしかに、まずくはない
しかし、うまい!と言うほどでもない
食べた後
「うまかった」とは思うが
「うまかった~~ッ」とうっとりするほどでもない
ただ、何度食べても飽きないことはたしかだ
とんかつとか、チキンカツ、メンチカツ、えびカツ、えび煮込み
納豆、ほうれん草、ナス、チーズなどなど
トッピングが何十種類もあって
目先を変えながら食べられることもあるが
基本的にあのカレーは飽きない
ある説によると
「“CoCo壱番”のカレーには、秘伝の特殊なスパイスが配合されていて
それが、麻薬のように習慣性を作って
何度も何度も“CoCo壱番”のカレーを食べたくなるように出来ている」
こんな説は
「日本国中の湖とか池に、ブラックバスが繁殖するようになったのは
釣具の上州屋が放流したに違いない。」
こんな本当のような、でも、ありっこない無邪気な噂話と同様に
“CoCo壱番”のカレーに麻薬が仕込んであるなんてわけがない
しかし
そんなことが、まことしやかに語られるほど
“CoCo壱番”のカレーは飽きない
では、“CoCo壱番”の店の繁栄はそのカレーの中にすべてあるのか
もちろん、食べ物屋さんは“うまい”が基本中の基本で
うまくなくては話にならない
その点では、“CoCo壱番”のカレーは十分に繁栄店の資格十分なのであるが
いやいや、それだけではないのです
“CoCo壱番”の繁栄の一番の秘密は、その接客にあるのです
もちろん
それは、マニュアルによる接客である
多くの外食産業が決まって取り入れている“マニュアルでの接客”
正直言って、私自身はマニュアルによる接客は好きな方ではない
マクドナルドの接客も
スタバの接客も
木曽路の接客も
白々しくって、いかにも「マニュアル通りに喋ってます」って感じで好きではない
ところが、“CoCo壱番”の接客はなぜか“自然”なのだ
言ってみれば、マニュアルを感じさせないマニュアルによる接客
では、なぜ自然に感じるのか
その理由は
そこに“歓迎の意志”を感じるからである
同じ「いらっしゃいませ」でも
「い・らっ・しゃ・い・ま・せ」と、ただの音が並んでいるだけではなくて
本音で歓迎の意志を持って「いらっしゃいませ」と言っているように感じる
「ありがとうございます」も同様だ
なぜか?
“CoCo壱番”の店舗は
その多くが“暖簾わけ(のれんわけ)”で独立した店長
みんな直営店で、あるいはFC店で修行して
本部が“合格!”としたレベルに達した上で、初めて店長となり
あるものは独立し、あるものはそのまま直営店の店長となっていく
苦労して店長になった店長が
もっと、もっと、と思って
店舗を運営していて
一人一人のお客様に、本気でありがたいと思っているのだろう
店長が本気なのである
本気で「いらっしゃませ」と歓迎し
本気で感謝の気持ちで「ありがとうございます」なのだ
本当の接客とは
白々しいマニュアル通りに喋るものでは断じてない
それではかえって逆効果である場合すらある
接客とは、テクニックではないのだ
同じ言葉でも、感謝の気持ちがなければ、白々しくなるし
本気で感謝の気持ちが入ると、はじめて自然になる
そりゃそうだ
感謝の気持ちもないのに「ありがとうございます」と言っても
ホントにありがたいと思っていないのだから、白々しいに決まっている
「ありがとうございます」は、ありがたいという感謝の言葉なのだから
感謝の気持ちで「ありがとうございます」と言って
はじめて、それが“自然”に聞こえるだけなのだ
別に精神論を言っているわけではない
当たり前のことを客観的に言っているだけ
店長が本気なので
スタッフも本気になる
店長がダレテいて
スタッフだけが本気になっているなんて構図は絶対無いのだ
“CoCo壱番”のカレーは決して安くない
平均の客単価は、きっと800円ぐらいだろうと想像する
たかがカレーなのに安くない
牛丼とか、ハンバーグに比べてみれば
平均単価はきっと倍以上であろう
なのに、誰に聞いても
“CoCo壱番”でカレーを食べることが、高いものを食べる贅沢とは感じていない
自然に、当たり前のように
高いのである
それで、give and takeが成り立ってしまっている
べらぼうにうまいわけではないが
キチンとうまいカレーと
決して白々しくなく、しかも仰々しくもない
自然な接客が
絶妙のバランスを持ち
しかも、いつも新メニューを用意して、カレーという狭いジャンルの中で
精一杯新鮮さを出している
これは、まさに
洗車という商品で言えば“快洗隊”
その理想の姿ではないか
快洗隊は、洗車の世界で“CoCo壱番”を実現しようとしている
そんな共感を持って
昨日も“CoCo壱番”で、カレーを食べてしまった
私は、会社の近くにある「CoCo壱番・東浦店」の
ちっちゃな背丈の
一人の女性店内スタッフのファンである
その子が流れるような身のこなしで店内を縦横にさばくのを横目で感じながら
メンチカツカレー・えび煮込みのトッピングで
1辛・普通盛を食べるのは
私の幸せの一つである
※動きが早くて、シャッターが追いつかない
※「いらっしゃいませっ、お二人様ですか?」
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