谷 好通コラム

2007年05月14日(月曜日)

1634.顔のでかさは同じ

スーパー耐久・鈴鹿戦の様子は「スーパー耐久参戦記」に詳しく書くこととして、
その前に、私はこのレースでカルチャーショックを受けたことを書きたい。

 

ノルベルト・シードラーは、
SONAXがプライベートスポンサーをしているドライバーで
2005年のヨーロッパF3000チャンピオンである。
だから圧倒的に速いのは当然なのだが、
その姿にカルチャーショックを受けたのだ。

 

本気でF1に上がろうとしている彼と彼のマネージャーは、
日本に来た目的を明確に持っていた。
自分の速さを日本のレース関係者に見せつけ、
彼が日本で走ることに対する有力なオファーを取り付けることだ。
日本で実績を上げて有名になり、F1に上がったドライバーが何人もいる。
それを狙っての事だろう。

 

目的がはっきりしているので、
彼らの行動のその一つ一つすべてがレースに勝つ事に集中していた。
ごく自然に、彼らの時間すべてがレースで勝つためにあった。
ただし、夜はハメをはずしていたが、
それでも、それはそれで意味があったように思えるのは
考えすぎなのかもしれないが、的外れでもないだろう。

 

何をどう言ってもしょうがないが、あまりにもレベルが違いすぎた。
国体の競技の中に、オリンピック選手が突然入り込んで来たようなもので、
桁違いなのだ。
でも、一緒に付き合わされる選手はたまったものではない。
目標としているものが桁違いに高い所にあると、
こまかい行動そのものの一つ一つまでが、まるで意味が違い、
何をどうやってもカッコイイのである。

 

これは仕方がないことなのだと解っていても、
ホ~~~~ッと思ってしまうのだ。

 

格の違いを見せ付けられて、
知らぬ間に彼のファンになっている自分に気が付いた後には、
逆に自分がコンプレックスを感じている事に気が付く。

 

ヨーロッパのモータースポーツの歴史は、
ヨーロッパの文化の中に溶け込んでいて、
その存在の重さと認知深さが日本とは比べ物にならないのだ。
その違いが、彼らの存在感の自然さと強さを感じさせるのであろう。
日本のようにごく一部の限られた人たちの閉鎖的なモータースポーツではないのだ。

 

彼を連れてきたのはポール・クリーガー、
SONAXの取締役輸出部長である。
彼の仕事はヨーロッパとアジア地区が主であるSONAXの輸出先の代理店と
SONAX製品の取り扱いについて交渉することである。
私の会社にもすでに十回は来ているだろう。

 

その度に、彼の態度が、
私たちが植民地の人間であるかのように
喋っているような傲慢さを感じさせるのが気になっていたが、
それは、文化の重みの違いを私が勝手に受け取り、
勝手にコンプレックスをもって
それを傲慢さと感じていたのだろうと思う。

 

シードラーは、圧倒的な存在感を持っていながら、
とことん無邪気な24歳の青年でもあった。
彼に傲慢さはかけらもない。

 

それでも、自分にコンプレックスを感じたのは、
彼らが持っている文化の重みではなかったのか。

 

ドイツに行った時にはそれほど感じなかったものを、
シードラーの圧倒的な速さにショックを受けながら、改めて感じさせられた。
日本は狭い。
世界は広いということなのだろう。
もっともっと広い眼を持たなくてはならない。
そして、自分の持っている文化にもっと自信を持たなくてはならない。

 

ドイツ人の中でもかなりデカイ顔のクリーガーに、
私は顔のデカサでは決して引けをとっていない。
(何の自慢にもならないが。)

 

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