谷 好通コラム

2007年09月11日(火曜日)

1729.大空から思うこと

今、札幌へ飛ぶ飛行機の中。
久しぶりにカメラを取り出して写真をいっぱい撮った。
雨が降ったあとだからだろうか、
地上がいつになくきれいに見えたからだ。
普段は、空が晴れていても、たいていの場合、
地上には乳白色のモヤがかかっているように、なんとなく白っぽく見える。
今日は、わりとはっきり見えるほうだが、
それでも、写真に撮ってみると、やっぱり少し白っぽく見える。

 

私は飛行機に乗るたびに外の景色を見るのが大好きだ。
たぶん、飛行機には一千回以上乗っているが、
乗れば乗るだけ、外の景色を見るのが楽しみになってくる。

 

ただし、アメリカやヨーロッパに行く時の長時間の飛行機では
断然、通路側の席を取る。
窓側の席ではトイレに行ったり席を立つ時、隣の人をまたがなくてはならないので、
何かと不自由なのだ。
それに、超長距離の飛行の場合ほとんどの時間、窓を締め切っている。
それでも食事の時間は照明をつけるが、
その他の大部分の時間は、“寝るため”に機内を真っ暗にしているのが通常で、
時差を寝て調整するためだ。
だから、窓側に座っても窓を開けることができないので、
窓側に座る意味が全くない。

 

その点、国内線は時差がないので寝る必要もなく、
好きなだけ窓を開けて、外の景色を楽しむことができる。
国内線では100%窓側の席を取っているわけだ。
外の景色は見慣れてくると、
地上の何処がどうなっているのかが分かって来て、実に面白い。

 

地上の景色も素晴らしいが、
もっと素晴らしいのが雲の様子だ。
特に飛行機が上昇、下降していく途中では
雲を見る角度がどんどん変わって、
巨大なスペクタクルを原寸のまま、生で見ていることになるわけで、
こんな素晴らしい景色を見ない手はない。

 

一千回以上見続けても、全く飽きないし、
見るたびに興奮を覚える。
しかし、夜のフライトはつまらない。
街の灯りがボツボツと見えたり、
海の上にはイカ釣り船の強烈な電灯が点々と見えるだけ。

 

 

そういえば、
夜の街の灯りで思い出すのは、
五年ほど前に行ったドイツからの帰りの飛行機で、
夜のシベリアを横断した時のこと。
広大な暗闇の大地を行く中で、ごくたまに、今にも消えそうな灯りが見えた。
隣と何百キロも離れて孤立している小さな町か、あるいは集落か、
無限の広さを感じさせるシベリアの大地に、ポツン、ポツンとある灯りの町を想像して、
胸が締め付けられる思いを持ったことがあった。

 

普段、自分が見えている世界はなんと狭いことか。
たった10,000m上空に上がっただけで、
見えてくる世界の広さが何百倍、何千倍になって、
いつもの自分が見えている世界がいかに狭いかを思い知らせてくれる。

 

“グーグルアース”を柴田さんに教えてもらって、
このPCに入れたが、
地球全体を見る絵から、ぐんぐんアップしていって、
最後には自分の家までがはっきりと判別できるところまで迫るのは驚異的ではあるが、
世の中の広さを感じるのとは、ちょっと違った感覚だ。

 

世界の大きさを実感するには、
飛行機ぐらいがちょうどいいのではないだろうか。
私が人工衛星に乗るような経験を持ったら、
グーグルアースを見て感激するかもしれないが、
あいにく、そんな経験は死ぬまでなさそうだ。

 

 

世界は広い。
飛行機から見る世界は、自分のちっぽけさを感動的に見せてくれるが、
そんな世界だって、地球全体から見ればほんの一部であろうし、
地球なんて、太陽系から見れば目に見えないゴミのようなもの。
そんな太陽系だって、
銀河系からすれば何億分の一の存在で、点として識別できるほどもない。
信じられないぐらい巨大な銀河系だって、
私たちが存在しているこの宇宙全体から見れば、
何億分の一か、何十億分の一か、気が遠くなるぐらい小さな存在だ。
その宇宙だって、
理論的に一つしか存在しないことの方が、
むしろ理論的に不自然であって、
無数に存在しているかもしれない宇宙の一つでしかないはずと、何かの本で読んだ。

 

そういう意味で、
私たちは人間が理解できる限界を超して小さな存在だ。
しかし、私たちは、
自らの意識の中で、
自分は間違いなく存在していることは事実で、
その存在としての大きさは、
存在しているという事実において、
自分も、地球も、宇宙も、同等なのだ。

 

自分は、ほぼ無限の小ささで存在しているが、
存在していること自体において、あらゆる大きさに同等な大きさを持っていることになる。

 

そんな存在としての人が、
他の人と、何らかの縁を持つということは、
損得などというちっぽけなものに比べたら、問題にならないほど大きいものなのだろう。

 

よく分からないが、そんな風に思った。

 

中部空港から飛び立って、約5分後。

 

 

上空まで来たら、東の空に3機、ジェット機が飛んでいるのを見つけた。

 

 

北海道に近づいたころ、すでに下降を始めている。

 

 

北海道にかかった。はるかかなた向こうには雲に隠れた襟裳岬。

 

 

着陸直前。電子機器を使っていけない時間に私のカメラは突然アナログに変わるのだ。
北海道の畑の風景。

 

 

5年前の写真を引っ張り出してきた。
ドイツミュンヘン空港に降りる直前、ドイツの畑の風景の写真。
北海道の畑の風景によく似ているでしょ。

 

 

これは先週、ロスにいたときに撮ったもの。
トニーの家のすぐ近くに、ビジネスジェットや軽飛行機専用の空港がある。
ちっぽけだが、豪勢なビジネスジェット機。
こういう飛行機には、
私は乗ることはないだろう。

 

 

やはり5年前の写真。
名古屋空港からドイツに向かう飛行機の中から、シベリアを見る。

 

 

夜、シベリアを見ると、たまにポツン、ポツンと灯りが見えるが、
こんな場所のどこに人が住んでいるのだろうか。不思議だ。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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