谷 好通コラム

2015年09月26日(土曜日)

9.26. その④ きわめつけ、”やさしさ”以上の”入れ替わり”

事業を成功された人たちが、必ずおっしゃることは、
「お客様の立場に立ってすべてを考えれば、何をすべきかがおのずと分る。」
似たようなことを、ユニクロ・ファストリテイリングの柳井正会長も書き、
CoCo一番館の創業者である宗次徳二氏も、
「ひたすらお客様のことだけを考え続ける」と書いていました。
少なくとも私が知っている事業に成功している人は、
みんな同じようなことをおっしゃっています。
これは、見事に共通項です。

 

これは、実に”きれいごとではない”のです。
善悪の問題でも、立派で美しいことでもなく、
ひょっとしたらビジネスの成功の極めつけの法則かもしれません。

 

商品を買ってくれるのも、サービスを受けてくれるのも、お客様です。
お客様が、
お客様の価値感で、
お客様の好みで、好き嫌いで、
あくまでもお客様自身の都合で、
お客様の選択として、買うか、買わないかを決め、
買った上で、お客様の価値感で、その商品が、
お客様の期待に沿っていたか、あるいは上回っていたか、
あくまでもお客様の感情と判断と都合による選択で、
また買うのか、もう買わないのかを決めます。

 

売る側、提供する側の都合はまったく関係無く、
こちらの都合、選択はこれっぽっちも無く、
あくまでもお客様の選択だけで、商品は買われ、代償としてお金が払われます。
このことは歴然とした事実であり当然のことです。
だから、ビジネスを考える場合、
お客様の立場に立ち、お客様がどう感じ、どう判断して、
どう選択されるのかだけを考えることは、
ビジネスを成功するための必須の条件です。
これはきれいごとでも、立派なことでも何でもありません。
歴然とした事実でしょう。

 

と、ここまではいいとして、ここからが問題です。
人は元来からして自分勝手であり、
自分の好き嫌い、損得、都合で選択をする性(さが)のようなものを持っています。

 

精神の成熟がまだ全然ない赤ん坊など、
お腹が減った、おしめが気持ち悪いと、自分の都合だけで泣き叫びます。
自分を愛してくれているお母さんの都合など関係なく、
まるでお母さんをいじめるかのように、泣き叫びます。

 

赤ちゃんは、本来的に超エゴです。

 

それがだんだん大きくなってくると、
他人の痛みや悲しみを自らの痛みや悲しみと感じるミラーニューロンが発達して、
共感(エンパシー)能力が成長してきて、
幼稚園、小学校、中学校と社会的な経験を積み
相手のことを思いやれるような社会性が育ってきます。
精神的に十分に成熟すると、
相手のことを思いやれるような、
社会性のあるやさしい大人になるということでしょう。

 

だから、精神的に成熟した大人がビジネスを考えれば、
自然に相手のことを考えるのでしょうが、
人はその根源の部分に、
赤ん坊の時から持っている「エゴ」があり、
これは良い悪いを別にして自己保存の欲求とか、
勝つことへの欲求とか、
誰でも、元来持っているものがあるので、
みんな、エゴと社会性との葛藤、あるいはバランスで生きています。

 

だから、相手の身になって、お客様の立場に立って考えると言っても、
自分の中の性、エゴが邪魔して、なかなか相手の立場になりきれません。
共感する部分があったとしても、
ミラーニューロン活動で共感性やさしさ全開でも、
なかなか相手の立場に立って考えることは出来ません。

 

だから、
私は「入れ替わり」が有効だと思います。
自分が、相手(たとえばお客様)が場所に行って
たとえば、お客様が座る場所に座って、そこで少し長い時間いると、
あるいはお客様になったつもりで思い描いていると、
勘違いかもしれませんが、
自分がお客様に”入れ替わった”ような気になります。
そして、ここが肝心なのですが、
お客様に入れ替わった自分のまま、自分の”エゴ”に聞いてみるのです。
お客様に入れ替わったまま、
わがままに、自分勝手になって、
店を感じ、スタッフを見て、作業も見て、わがままに感じると、
お客様にとってこの店がどうなのか、何が不快であり、
何が気に入って、何が欲しくて
どんなものに親しみを感じるのかが分ります。

 

エゴを押し殺して共感性を発揮するということではなく、
共感性を利用して”入れ替わり”、
入れ替わった状態で自分のエゴに耳を傾けてみると
見えなかったお客様からの景色と感情が見えてくるのでないでしょうか。

 

こういうことを書いても、
なかなか自分でコントロールして出来るものではありませんが、
でも知らず知らずのうちに、
商品を考えたり、サービスを考え、施策を考えたりする時、
自分がお客様になったまま、
エゴを出して考えている自分に気がつく時があります。
こういう時思いつくことは、論理的に組みあがったようなことではなく、
ほとんどひらめきに近いものです。

 

私は人よりも精神的に成熟しているとはとても思えないので、
人よりも強い共感能力を持ち合わせている訳でもなく、立派でもないので、
こんなことをしています。
でも、こういうひらめきは、すごく役に立っていることも事実です。
だからたぶん、
少しはお客様の役に立てて、
お客様から必要とされるKeePerになれてているのでないか、
そんな風に思っています。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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