谷 好通コラム

2020年06月19日(金曜日)

6.19.上意下達(じょういかたつ)的な発想の「落とし込み」

最近の話し言葉には首をかしげることが多い。
一つの言葉で色々な意味に使ってしまっている。
最も多く使われるのが「確認する」という言葉で、
確認するとは「確かめる」という意味だが、
ただ単に「聞く」「見る」という意味で使われたりする。
たとえば、
事務所に電話で「○○さんいますか?」と聞くと「確認します。」と一言。
「席にはいませんが。探してきましょうか。」とか、
「来客中です。」とか、今の状況を言ってくれればいいのに、
「確認します。」と一言だけ言ってずっと保留音になると、
聞いた私にはどう状況なのかが一切分からずに待ち続けることになるので、
その電話は切る。

 

たとえば、
お客様がお問い合わせの電話をしてきて、
「今、お店、混んでいますか?」と聞いただけなのに、
一言「確認します。」と言って、
保留にして、店の上司に
「お客さんが混んでいるかと聞いていますがどう答えましょう。」と聞く。
混んでいるかどうかぐらい見れば分かるのだから、
それはまず答えなければならない。
その上でお客様に「すぐ洗車できる?」と聞かれたら、
「店長に聞いてみます。」と言われれば、
電話に出た子が店長に聞いてくれてるのだから、こちらも待つ気になる。
でも、こんな時にも「確認します。」の一言で済まされるとイラっと来る。

 

たとえば、
会議で出席しているメンバーに何かを質問したら、
そのメンバーは「確認します。」と一言言ってPCをいじり始める。
分からないのなら「分かりません」と言って
その上で「調べましょうか」と聞けば、
こちらも「はい、調べてください。」と言うか、
「知らないのなら、それでいいです。」と終わるかどちらかなのに、
こんな時の「確認します。」の一言は、意味不明で、
その人にはもう何も聞きたくなくなる。
今の人は、多くの場合「確認する。」を「確かめる。」という意味では使わない。
その人の都合のいいようにものすごく幅広い意味で、
好き勝手にぼやッと使う。

 

そういう意味では、「共有する。」も広い意味で使われる。
中には「ご共有する」と「御」まで付けられて使われるようになっている。
決して、正式な文章の中には出てこない面白い使われ方だ。

 

あるいは自分の口で「私の所感は・・」と言う。
「私は・・・と思います。」と言えばいいのに、
かしこまった文章を書いた時に使う「所感」を話し言葉で使うのは滑稽だ。

 

また、最近の耳にするようになったのは「落とし込む。」という言葉。
「落とし込む」を辞書で調べるとまず「おとしいれる(陥れる)」と出てくる。
相手をハメるという悪い意味で使う言葉なのだが、
「このデザインには、私の考えを反映させてある。」と言う意味で
「このデザインには、私の考えを落としこんである。」と、使う場合もある。
しかし、
「今回決まったことを、全国の皆に落とし込んでいく。」とは、使わない。
あるいは「落とし込む」とは、あくまでも上位の者が、下の者に
正しいことを一方的に伝えることをいい、
上意下達という民主的な議論とは正反対の独善的な言い方だと理解している。
上から下への独善的な落とし込みとは、
正しいコミュニケーションで成り立つ現場主義とは正反対の言葉と言わざるを得ない。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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