谷 好通コラム

2024年01月23日(火曜日)

01.23.古き良き時代の仲良し倶楽部に、吹っ切った19才店長がやったこと

19才の私は、とっても小さなガソリンスタンドに店長として着任しました。その頃(約50年前)のガソリンスタンド業界は、第一次石油パニックの前でもあり、実に平和な仲良し倶楽部のような業界でした。毎月、石油商業組合の末端組織である「ブロック会」が10人ぐらいで開かれ、そこに集まるのはガソリンスタンド1軒か2軒を経営する「親父」的な人がほとんど。多くのチェーン店を持つ会社の1店舗を担当する「若いサラリーマン店長」は私を含めて小数派で、多くの親父達の中ではまるで「小僧」扱いです。

そのブロック会での主要な話題は「値段」。店頭での現金販売価格と大口・小口の掛売り先販売価格をなにげなく皆で仲良く座談会。掛け売りの価格はともかく、店頭現金価格は決して抜け駆けして安売りに走らないように何気なくお互いにけん制した。あくまでも、何気なくだ。当時は、現金販売価格が一番高く会社関係の売掛価格は何円か安く売るのが慣例だった。掛売りの方が集計の手間や請求書発行の手間・経費を考えると、むしろ高くなるはずだが、売掛客はご贔屓様という事で一見さん(現金客)よりサービス価格という意味だろう。そんな喧嘩せずに皆で仲良く生きて行こうという平和な世界だった。

しかし、その時、私が所属していた会社は新興の会社で、他店よりも安く売ってゴリゴリと売り上げを上げていくタイプの会社の店で、平和な仲良し社会に急に舞い降りたようなものだ。更に私は「どうせ小さな店だから、お前の好きなようにやって見ろ」と言われている。最初は私も平和に店長をやっていたが、営業会議のたびに「ちっとも売り上げが上がっていない。お前は仕事をやる気があるのかっ!。」と叱咤されていた。

19才の私は、ある時、何か吹っ切れたように店頭に大きな看板を上げた「現金が安い!。名古屋で二番目に安い!!」。そして、本当に大口掛売り客の安い値段より2円安く現金客にガソリンを売った。(一番と書かずに二番目に安いと書いたのは、私に何かためらいがあったのだろう。)

すると、安値看板を上げた翌日から現金客がどっと増えて、売り上げは二倍から三倍、四倍とどんどん上がっていって、会社からべた褒めされた。

 

がしかし、私は、あの時の事は、ちっとも嬉しい思い出として残っていない。

いま思うと、むしろ、つらい。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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