谷 好通コラム

2024年11月09日(土曜日)

11.09.「サービス業」と「物販業」の違いはお大きい。

洗車屋快洗隊がKeePer LABOに発展する頃。
フランチャイズ店を積極的に募集していた十数年前の手探りの頃の事です。
洗車屋快洗隊はその名のごとく「洗車屋」であって、
「極上手洗い洗車」が店の主製品であり売り物でした。
その頃の手洗い洗車の相場が2,000円/台くらいだったので、
単なる手洗い洗車ではなく、
自社製の専用の高密度ムートンモップを使ったり、
超吸水力のタオルを使ったり、より丁寧な作業マニュアルで洗い、それを、
「極上手洗い洗車」として、3,500円/台の値段を付けていました。
これにプラス、
ポリマーコーティング「キーパー」(今のピュアキーパー)を、
洗車よりもっとキレイになるという事で売っていました。

 

当時はコーティングと言えば、
ポリッシャーを使ったポリマーコーティングが主流で、1台5万円ぐらいを
ポリッシャー無しポリマー⇒キーパーとして仕立て直し、
お客様が待てる時間(45分)で出来るキーパー(5,500円程度/台)を、
高付加価値商品と位置付けた。

洗車とピュアキーパーだけだったから平均単価は低く(4,500円前後)
もの凄くたくさんの台数をこなさねばならないが、頑張って高収益店舗とした。

 

高収益店舗が出来れば、当然、多店舗展開を考える。
自店舗を増やしていくのと同時にフランチャイズ店を募集した。
新店の出店を加速する為には採算点に届くまでの時間を短縮せねばならない。
速く言えば「早く売り上げを上げなければならない。」
売り上げは、
来店客数✖単価=売り上げであり、
来店客数とは、新規客+(新規客✖リピート率✖年数)=来店客数なので、
来店客数を速く上げる為には、
新規客数を上げなければならない。ならば「安売り」だ。

 

新規のお客様を呼び込むには、ガソリンスタンドでの経験が長かった私には、
「安売り」が真っ先に頭に浮かんだ、
というより、それしか思い浮かばなかった。

 

そこで、「極上手洗い洗車」を、
オープンイベントとして1か月間「期間中1,000円で提供」とした。
2,500円の値札が着いた「極上手洗い洗車」を、期間中1,000円で提供。
品質はもちろん「極上手洗い洗車」そのものであり、
その良さを、オープン期間中だけ1,000円で提供して、
その良さを知ってもらおう。という企画だ。
この企画は当たった。
期間中、1,000円洗車を求めるお客様がいっぱい来て、店内は大繁盛。
店舗スタッフはぶっ通しで「極上手洗い洗車」を続けた。
もちろんその時に、必ずキーパーの紹介も忘れない。
さらに品質を落としては、
「その良さを知ってもらおう」という意味が無くなるので、
みんな必死で延々と続く1,000円洗車をやり続けた。
そしてやっと一か月、1,000円洗車の期間が終わってみんなグッタリとなった。

 

それから、しばらくガランと暇な時間が続いて、
そのしばらく続いたのが、ずっと続いて、1か月、2か月経って、
結局もずっと来なかった。
1,000円洗車を1か月の期間中に3度も来たあの人も、
あの後一度も来なかった。

 

ただ単に1,000円で買ったものを2,500円で買う気にならなかったのだろう。

 

まず一回やって見てもらって、良さを知ってもらい、
その良さを、今度は、通常の2,500円で買い続けてもらおうとしたのだが、
1,000円洗車で大混雑の時、
多少なりとも品質が落ちていたことは否めない。
そういう事も少しはあったかもしれないが、
1,000円で自分も含め皆が買ったものを、
改めて自分が2,500円で買う気にはならない。
同じものが1,000円で買えた時に買ったのは利口だったにしても、
それを2,500円で買うのは賢くない。
1,000円でまた売る時を待てばいいだけなのに。
とか、やはり、
初めて使った時に安く買ったものを、
これからも高く買ってもらおうというのは無理だった。
ということなのか、1,000洗車に来られたお客様はほとんど固定しなかった。
後には、1か月間の喧騒に疲労困憊したスタッフ達が、
1,000円でしか買わないお客様を嫌いになってしまった後遺症が残っただけ。

 

十数年前の1,000円洗車企画は、3軒ほどの新店で行われただけで終わった。

私は何を間違ったのだろうか。
私が昔、
ガソリンスタンドで新規オープンする時は、
「オープン企画」でティッシュや野菜など景品を大量に配って、
特別価格で安く売って、とにかく、一度来てもらおうとした。
一度来ていただいて、気に入っていただき
便利さを憶えてもらえば、この店に来るのが癖になってくれるかもしれない。
そんな感じだった。
1,000円洗車と同じように。

 

しかし、ガソリンスタンドの時は、
商品が「ガソリン」などの数値で規制された燃料で、品質が保証された物、
つまり付加価値がほぼ100%同じ商品であり、
どの店で買ってもその付加価値は、ほぼ完全に同じだった。
違うのは、その店に行く距離などの利便性や、店や店員の感じの良さぐらいだ。
お客様が得る商品からの付加価値は、どの店で買っても同じだった。

 

しかし、洗車は、車が洗われてキレイになること。であり、
どこまでキレイにしてくれるのか、どのくらいキチンとキレイになるのか。
特に手洗い洗車の場合はキレイにするのは”人”だ。
その人が、その技術で、その場で作り出す純粋にサービス商品です。
作業をする人の、持っている技術、感性、価値観、そして良心
そして、その店が決めているキレイさの範囲と程度、
それによって、お客様が得られる付加価値の量は相当に違う。
どれくらい、どこまでキレイになるのかは何も保証されていない。
そのサービス商品についている値段は、客観的な判断は出来ない。
そのサービスを受けるお客様が持った価値感で決まる。
文字通り客観的に決まる。
同じような仕上がりでも、そのお客様の価値観によって高いか、安いか。

 

1,000円で買って満足感を持っても、
それは1,000円で買った商品に対する満足感であり
一度1,000円で買った後に
それをまた2,500円で買うかどうかは、
1,000円で買った時の満足感を経験してしまうと、
2,500円で買う為のハードルはむしろ、余計に高くなるのではないだろうか。
一度1,000円で買ってしまうと、
それに満足があったにしても次に2,500円で買うか。どうか。
結果的に誰も買わなかった。

せっかく高い価値のある物でも、
一度安く売ってしまえば、高くは買わないもののようだ。

 

これがKeePerコーティングのように、
元々、もっと高い付加価値を持った商品では、
その傾向がより強くなるのではないか。
洗車は「汚れた状態(マイナス)を、汚れていない状態(ゼロ)に戻すだけ」。
付加価値はゼロになるという有限なものだ。
しかし、
KeePerコーティングは、傷んだ状態(マイナス)、あるいは新車の状態(ゼロ)を
はるかにキレイな状態(ブラス)にするサービス商品で、
施工する人の技術力と、施工する環境と、
その店が決めているキレイさの範囲と程度で、
その価値の大きさは無限と言っていいほど大きな幅がある。
技術の高い人が、良好な施工環境で、
お客様の事をしっかりと思って、
真剣に、キチンと施工したKeePerと、
VS.
低い技術の人が、劣悪な環境の中で、
会社(上司)からやらされ仕事として、
イヤイヤ、適当に施工した悪いKeePerでは、
何十倍もの大きな差が出る。
というより悪いKeePerでは、キレイになるどころか、かえって汚くなる。

かえってマイナスになって、
キレイさの差どころではなくなる。
サービス商品とはそういうものだ。
お客様も、それを良く知っている。

 

良いサービスは気分がよくなるが、
悪いサービスを受けるとかえって不愉快になる。

 

良い治療は、体を健康にするが、
悪い治療を受けると、命取りになることがある。

 

上手いマッサージを受けると、気持ち良くなるが、
悪いマッサージは、、気持ち良くならないだけでなく体が壊れることがある。

 

この事を、お客様は経験的によく知っているので、
KeePerをやろうと思ったら、良いKeePerを探す。
技術の高い人が、良好な施工環境で、お客様の事をしっかりと思って、
真剣に、キチンと施工してくれるKeePerを探す。
特に大切な車に、高いKeePerを掛けようと思っている人は良く調べます。

 

お客様が選ぶ基準になるのが、
ホームページを見て、技術者が持っている資格、人数、施工環境の良否。
施工台数の多さ=施工実績の量。お客様の評価。
ホームページ上で、この店が信用できそうかどうか。
今は、Googlemapでの口コミ評価など、
いろいろと調べるようだが、
最初から値引きを売り物にしている店は、
真っ先に、その品質についてうさん臭く思われる。

「安さ」を売り物にしている接客業、病院、マッサージが
そのクォリティーについて、自信を持っているとは思えない。

 

最近見つけた例で
「KeePer LABO店頭価格から○○%引き」などというのがあった。
自分の店のKeePerが、
少なくともKeePer LABOより低いと、自ら、言っているようなもので
いかにオーバーに自店の技術力を誇る言葉を並べても、かえって嘘っぽい。
逆を言えば、LABOより・・・・安いと基準されるということは、
世間は自分よりLABOが上だと見ていて(つまり自分もそう思っていて)、
そのLABOより安い。と言いたい訳だから、
良いKeePerを探している人は、
やっぱりLABOでやろうと思うだろう。

 

もっと言えば、
サービス商品を提供する店舗は、
その技術力と、お客様からいただいている高い評価を誇るべきで、
○○%を売り物にすると、かえって自分の足を引っ張り、安んじる事になる。

 

どうせなら、その店舗・スタッフの技術力を誇った方が
よほど、お客様の質の良いKeePer選びの役に立ちます。
KeePer技術コンテストでの実績は、そのいい証です。
KeePer技術コンテストチャンピオン横断幕、ポスターなどは、
上質なKeePerを求める人の強い購買動機になります。
ただしその表現に、誇大な内容を感じさせる表現をすると、
うさん臭く思われて逆効果になるので要注意です。

 

「付加価値が固定していて保証されている商品」を販売する場合、
それを「安く売る」のは
買った人が得る付加価値は変わらないので
強い拡販方法です。
しかし、
付加価値をその場で、その人が造り出す「サービス商品」を販売する場合、
その「サービス商品」を安く売ると、
付加価値は一定していないので、
拡販にならないどころか、かえって多くの場合、マイナスになります。

 

 

たまに古い連中と火鍋を囲む機会があると、
酔っぱらった勢いで「1,000円洗車、またやるか?」と言うと、
みんなが、「ダメダメダメあれは絶対やめましょう。」と大盛り上がりします。
・・
余計な事でした。

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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