谷 好通コラム

2005年07月31日(日曜日)

1226.僕の車を使おう!

ドイツSONAXは、
ミュンヘンからアウトバーンを通って約1時間。
と言ってもアウトバーンは時速200kmで走るので、
何キロ離れているのかよく解らないが、
広々とした自然の中にある田舎ノイブルグにある。
人口は3万5千人(3千5百人?)か、どちらだかよく解らない。

 

ノイブルグ城の城下町で街の真ん中に大きなお城がある。

 

SONAXはノイブルグ最大の企業で社員が500人。
ドイツのカーケミカルの50%以上のシェアを持っている会社だ。
アイ・タック技研は、このSONAXと4年前から技術提携している。

 

今回SONAXを尋ねたのは、
まったく新しいコーティング剤の開発の大詰めを、
SONAXの技術責任者Dr.ピッチと、私と専務、我が研究所の責任者の4人で
直接話し合い、テストを一緒にやって詰めて行きたいと思ったからだ。

 

テストの当日、Dr.ピッチはニコニコしていた。
どうも何か自信作を持っているようだ。

 

 

何ヶ月か前に最初の試作品を受け取ってから、
開発部の連中が度重なるテストを行なってきた。

 

単に受け取った試作品を単独でテストするだけでなく、
市販で売っている製品、
売込みを受けた業務用の製品、
果ては日本のマニアの中で最高の評価を受けている製品、
最高の技術を持っていると思われるショップから太鼓判を押された製品、
アメリカの展示会でメーカーから直接受け取った製品、
我が研究所独力で製作した試作品、
考えられる対象品をずらっと揃え、
その中でも使い物になると考えられるものを十数種類揃えて、
14の項目(社内秘)についての比較テストを繰り返してきた。

 

その結果、
SONAXからの試作品がどの項目で優れ、劣っているかを、
出来るだけ客観的に評価してSONAXに送り、その度に改良品が送られてきたが、
どうもピンと来ない。

 

たしかに独自性はあるのだが、
他の製品、試作品に劣っている部分も多い。
やはり、世間で最高との評価を受けている製品がやはり最高の得点を得ているし、
我が研究所の試作品もなかなか良い。
しかし、SONAXの試作品には何か大きな可能性があるような気がして、
なお改良点を指摘し、試作を依頼してきた。
開発番号はすでにVP16まで来ている。
16回試作品を作ったという意味だ。

 

この過程は、実はものすごく大変なのだ。
そして、テストを繰り返すのもものすごく大変な作業である。

 

今回のテストは開発部の増田君が中心となってやってくれた。
何台もの社員の車が彼のテストの餌食となって
マスキングテープの跡だらけになっている。
私の車ももちろんそうだ。
ボンネットやトランク、ドアまでが色々なコーティングに塗り分けられ、
「僕が洗って結果を見ますので、それまでは洗わないで下さい。」
と、念を押されている。

 

増田君、彼自身の車も、
何度も何度も、違うコーティングを塗っては取り、塗っては取り、
本人だけがどうなっているかが分っていて、私たちにはさっぱり分らない。

 

彼の車は、もう10年以上前のセルシオ。40万円で鶴見部長から買ったものだ。
テストには彼の車が一番使われている。
自分の車でやるのが一番わかるのだそうだ。

 

 

製品開発者にとって、せっかく試作品を作っても、
まともなテストもせずに文句ばかり言われると嫌になってしまう。
逆に、本気でテストをして、
きちんと評価をし、真面目に改善要求を出されると、
開発に力が入るものだそうだ。
我が研究所の担当者もそう言っていた。

 

 

日本でのテストも来るところまで来て、
いよいよドイツに来て直接話し合い、
一緒にテストをしようと、やって来た私たちに対して、
Dr.ピッチは意気に感じてくれたのか、かなり開発を進めてくれたようだ。

 

やおら、出されたのが「VP20」と「VP23」
日本に届いていた最終版がVP16だったので、
一挙にVP17.18.19.20.21.22.23と7種類も試作して造ったようだ。
ひょっとしたら24.25・・もあったのかもしれない。
その中から20と23をピックアップして持って来てくれている。

 

早速使ってみる。
作業者は、アイ・タック技研を代表して専務が作業のすべてを行なう。
客観性についてアイ・タックでも最も信頼がおける一人だ。

 

まずVP20、意外に使いやすい。

 

しかし、ドイツは日本よりもはるかに涼しく、
多分、このときの温度は25度ぐらいであったであろう。
軽く30度以上になる日本を考えると、
この使い良さはかなり割り引いて考えなければならない。
「艶」も「傷の埋まり具合」も「発色」もぞくっとするほど良い。

 

次に日本から持ってきた最高の評価を得ている製品と、
我が研究所の最新作。
やはり両方ともかなりいい具合だ。
我が研究所の担当者が作った物も、グンと性能を上げてきているようだ。

 

最後に「VP23」
あっけないほどの作業性だ。拭き上げも何の抵抗も無い。
大変いい。
塗布効果も「VP20」に匹敵している。
「う~~~~ん。最高じゃん。これ」

 

使ったのが、
Dr.ピッチの自分の車。「アウディA6アバント」
2週間前に来たまだド新車である。
会社のリース車であるが、自分の専用車であり、そういう意味では自分の車なのだ。
「僕の車を使おう」と、何のためらいもなく出して来た。

 

この手のコーティングは新車に使われることが多いので、
新車でのテストは大切な要素なのだ。ありがたい。

 

ボンネットにマスキングテープを張り巡らし、何種類かのコーティング剤を塗り分ける。

 

 

彼は、マスキングテープははずすが、コーティングを塗り分けたまま、
ボンネットをオセロの碁盤の様にしたまま、
耐久テストをすると言う。
この辺の感覚は、うちの開発部の連中と同じである。

 

次に経年車
使った車は10年物のBMW
まったく問題ない。
集中する専務、体のしんどさは私と同じはずだ。

 

 

開発部の連中の熱心なテストと、
研究室の本気での対抗品の製作が、
ドイツの本気を喚起して、ひょっとしたら最高の物が開発出来たかもしれない。
ひょっとしたら。

 

まだこれから、時間を掛けて「艶の耐久性」「・・・・」などなど、
時間を掛けてテストをして、
もっともっと改良を進める事になるだろう。
しかし、第一段階と第二段階で目標の性能が達することが出来れば、
あとはステップを踏んでいけば、多分OKだろう。
油断するわけには行かないが、見通しは立った。

 

実にエキサイティングな3時間ほどであった。
とりあえず大満足である。

 

Dr.ピッチとベテラン開発スタッフ

 

 

ノイブルグはミュンヘンと同じように日本の北海道と同じ緯度にある。
夕方5時になってもまだ完全に明るい。
夏、空が暗くなるのは何と夜9時を過ぎてからなのだ。

 

テストが終わって、ノイブルグの象徴であるお城を見に行く事になった。

 

長い城壁に囲まれた城内は一つの街のようである。

 

 

市役所がお城の中にあるのだ。

 

 

Dr.ピッチは、この城内の中心にある王族のこのプライベート教会で、
この春、クラウディア嬢と結婚式を挙げたそうだ。信頼できる人である。

 

 

最悪の体調で迎えたこの日、
テストが始まると、まるで嘘のように集中できた。
実にエキサイティングな一日であった。

 

ちょっと照れてしかめっ面をしてみる。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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