谷 好通コラム

2005年07月27日(水曜日)

1223.ハーレムど真ん中

トニーが、
「“ハーレム”は絶対に行こうよ。」と言っていた。

 

ハーレムとは、ほとんど黒人だけが住んでいる場所で、
マンハッタンの北に位置している。
黒人がその独特のリズム感と美的感覚で作り上げている街であり、
マンハッタンの他の地域とは全く違うムードの地域で、基本的に貧しい。
映画などを見ていると犯罪の巣窟のようなイメージだ。

 

そんな所なので、
トニーが「ハーレムに行こう。」と言ったとしても、
車の中からその様子を見るだけで、
グルッと素通りをするだけだと思っていた。

 

 

「そろそろこの辺からハーレムですよ。」と言われた頃、
大きなビルが少なくなって、
下町らしい風景になり、
道を歩いている人がほとんど黒人ばかりとなった。
ちょっとドキドキである。

 

黒人の子供たちがフェンスに囲まれた場所で、
バスケットをやっていたり、
アパートの階段で若者がたむろしていたり
これがハーレムの普段の光景なのだろう。
映画とかテレビで見たことがあるような光景が目の前にある。
感激、大感激である。
目の前で、実際に何かドラマが繰り広げられているようで、
頭がクラクラしてくるようであった。

 

 

でも、ここの人たちにとっては普段の生活であって、
好奇心でカメラを向けるのは、何かいけないような気がして、
結局シャッターを押せなかった。

 

車は、ハーレムの中心街、一番にぎやかな通りに入って、
車の通りも増え、一挙に人通りも増えて、着飾っている人も多い。
目が回りそうだ。

 

トニーが言う。
「さぁ、降りよう。」

 

「えっ~っ!!!!、降りるのっ? ここでっ!」
びっくり仰天した。

 

ハーレムのど真ん中の、
黒人が、ド派手な格好してうようよ歩いている真っ只中に、

 

・ひ弱そうな日本人のオッサン(キヨチャン)と、

 

・デブのノソっとした日本人のオッサンが(ヨッチャン)が、

 

・喧嘩っぱやそうな日本人のオッサン(トニー)に連れられて、

 

“丸腰”で(拳銃を持っていないという意味である。)出て行こうとは、
なんという無謀!なんという暴挙!

 

とんでもない、と思いながらも、
「ほ~~~~~っ、面白いね~っ」と、
嬉々として、繰り出したのである。

 

私はこういうのが大好きだ。脳天から電気が走るほど強烈に大好きだ。

 

車から降りると、周りは黒人ばかり、
バリバリに緊張する。
一瞬、自分が、ピラニアがうようよいる河に放り込まれた子豚のような気がする。

 

 

ひ弱そうな日本人のオッサン(キヨチャン)も、
顔に緊張の色が出っ放しである。

 

 

緊張の内にも、
ピラニアの中の子豚は、道路を走る変なバスを見つけた。
二階建てのバスで二階部分がオープンになり、
そこには観光の白人たちがぎっしりと座り、ハーレム見物を決め込んでいる。
バスにはNew York SIGHT SEEING(ニューヨーク観光)と、でかく書いてある。
まるで、
猛獣の群れを安全な車の中から見物する
怖いもの見たさの“サファリ観光”のようである。
何とも失礼なバスである。

 

 

安全な車の上から見る彼等の目に、
野獣の中に混じっている私たちが、どんな風に映ったのか。
そう思ったら、ハーレムの雑踏の中に混じっている自分が、
なぜか誇らしく思えて来て、
緊張感がすっかり無くなってしまった。

 

リラックスして街を歩くと、
ハーレムの彼らがものすごくカッコよく見えてきて、
体が熱くなるほどワクワクして来る。

 

ジャズ好きな人なら誰でも知っているハーレムの「APOLLO劇場」
ジャズミュージシャンの登竜門であり、
有名なミュージシャンは、この舞台を必ずと言っていいほど踏んでいるそうだ。
大阪弁の何とかいう女性ジャズシンガーもこの舞台に出ていたそうだ。

 

 

入り口に立つと、すぐにでも中に入ってみたい衝動に駆られるが、
こんな真昼間からやっている訳が無く、
ただただ、「すっげえな~~」と感心するのみであった。

 

 

子供までカッコイイのだ。このハーレムでは。

 

 

こんな、ほとんどの人がしたことがないであろう貴重な経験が出来たのは、
何よりも“トニーがいてくれたから”である。
感謝してもし切れるものではない。

 

トニー、ありがとうございました。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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