谷 好通コラム

2005年07月31日(日曜日)

1227.新洗車方法を発見

SONAXでのテストを終えた翌26日、
この日の午後4時20分の飛行機でアムステルダムに飛ぶ。

 

フライトの時間までかなり間があるので、
ノイブルグからミュンヘンへの道程で、
洗車屋さん、あるいはディテーリングショップがあったら見学をしたいとお願いした。

 

最初に行ったのがノイブルグの街の中か、
ちょっとだけ出た所にあったディテーリング屋さん。
近くの中古車屋さんの車を磨いたり、室内の清掃をしているそうだ。
そこで面白いものを見つけた。

 

コーティング、あるいはワックス掛けの前にやる“洗車”だ。
その方法が今まで見たことのない方法で、非常に面白かったのだ。

 

?
まず、「特殊な洗剤」を泡にして車全体に掛け、そのまま1分~2分放置する。
ホィールハウスの裏なども丁寧にかける。
多分浸透性の高い界面活性剤で汚れを浮かす働きがあるのだろう。
SONAXの製品なのでインセクトリムーバーに近いものかもしれない。
サンプルをSONAXからもらう事にしている。

 

 

?
ボディーの汚れを浮かした上で、
前輪のホィールに「ホィールクリーナー」をかけ、高圧の水でスプレーする。
ホィールクリーナーは、
キーパー製品のアイアンイーターに使われているチオグリコール酸を含んだアルカリ性の界面活性剤。

 

 

?
最初の「特殊な洗剤」で作った泡を、もう一度かける。

 

 

?
その上から、「マイクロファイバークロス」でボディー全体をこすっていく。

 

 

このクロスを使えば、繊維の中に細かい砂が入り込んで、
スポンジでこするように傷が入ることはないという。
くわえて、マイクロファイバークロスの掻き取り効果で汚れが取れるそうだ。
一理あり。
これは日本に帰ってから早速試してみる事にする。

 

 

?
ボディー全体をこすったあと、高圧水のスプレーで丁寧に洗い流していく。
ホィールに中まで丁寧に流していく。

 

 

?
この後がまた面白い。
「ウォータードライヤー」というケミカルを混ぜた水をかけるのだ。

 

 

?
この「ウォータードライヤー」をかけ、屋外に出して放置して乾かすという。
タオルなどで拭き上げることはない。
するとボディーに残った水が、すーーーーっと下に切れ落ちて、
ウォータースポットを発生することなく乾いてしまうというのだ。
面白い!

 

 

よく見ると、水がはけて行くように下に移動し、
薄い水膜となって、薄っすらと乾いていく。

 

ここで俄然、我が研究所の佐古さんと議論になった。
彼は、
「カチオン活性剤で弱い撥水を出して水が捌けて行くようにしている。」と言う。
私は、
「いずれかの活性剤で一時的に超親水のような状態を作って、薄い水膜にして、
ウォータースポットが出来ることなく、早く乾いてしまうようにしている。」

 

その「ウォータードライヤー」をかけた表面をお互いににらみ、
だんだん議論が白熱して、
声も大きくなっていく。
こうなると、佐古さんも私も譲らない。

 

実演をやってくれたこの店の若いスタッフが、
「何を話しているのか、教えて欲しい。」と通訳役の吉村さんにしきりに言うが、
この議論、化学用語がバンバン飛び交っていて、
とても、普通の言葉では通訳しきれるものではない。

 

結局、二人とも同じことを違う角度から言っているだけのようだと納得して、
議論を終えた。

 

いずれにしても、このウォータードライヤーをかけたボディーは、
ウォータースポットができる兆候もまったくない状態で、
きれいに乾いてしまった。
その後に薄っすらとケミカルの乾いた後にパウダーのような膜が残り、
そのままワックス掛けをすると、大変具合がいいというのだ。

 

この“膜(フィルム)”という言葉に反応した佐古さんと私の議論が、
再び熱しようとした時、
困り果てたようなこの店の若いスタッフの表情に気が着いて、
私と佐古さんは顔を見合わせて笑った。

 

この若者、びっくりしたであろう。
見学に来た日本人が、すんなりと説明を聞くどころか、
突然議論を始め、
「それをもう一回やってみてくれないか。」と言いつつ、
写真をパカパカ撮りながら、
「ほーら見てごらんここを、うっすらと乾いていくじゃんね」とか、
さっぱり分らない言葉で議論を始めたのだ。

 

丁重に侘びを言って、その場を去る事にした。

 

ア~~面白かった。
ゴメンナサイね。
ノイブルグの真面目な洗車の仲間。

 

 

これは、何時か何かに役に立つような予感がする。
いい勉強をした。

Posted   パーマリンク

2005年07月31日(日曜日)

1226.僕の車を使おう!

ドイツSONAXは、
ミュンヘンからアウトバーンを通って約1時間。
と言ってもアウトバーンは時速200kmで走るので、
何キロ離れているのかよく解らないが、
広々とした自然の中にある田舎ノイブルグにある。
人口は3万5千人(3千5百人?)か、どちらだかよく解らない。

 

ノイブルグ城の城下町で街の真ん中に大きなお城がある。

 

SONAXはノイブルグ最大の企業で社員が500人。
ドイツのカーケミカルの50%以上のシェアを持っている会社だ。
アイ・タック技研は、このSONAXと4年前から技術提携している。

 

今回SONAXを尋ねたのは、
まったく新しいコーティング剤の開発の大詰めを、
SONAXの技術責任者Dr.ピッチと、私と専務、我が研究所の責任者の4人で
直接話し合い、テストを一緒にやって詰めて行きたいと思ったからだ。

 

テストの当日、Dr.ピッチはニコニコしていた。
どうも何か自信作を持っているようだ。

 

 

何ヶ月か前に最初の試作品を受け取ってから、
開発部の連中が度重なるテストを行なってきた。

 

単に受け取った試作品を単独でテストするだけでなく、
市販で売っている製品、
売込みを受けた業務用の製品、
果ては日本のマニアの中で最高の評価を受けている製品、
最高の技術を持っていると思われるショップから太鼓判を押された製品、
アメリカの展示会でメーカーから直接受け取った製品、
我が研究所独力で製作した試作品、
考えられる対象品をずらっと揃え、
その中でも使い物になると考えられるものを十数種類揃えて、
14の項目(社内秘)についての比較テストを繰り返してきた。

 

その結果、
SONAXからの試作品がどの項目で優れ、劣っているかを、
出来るだけ客観的に評価してSONAXに送り、その度に改良品が送られてきたが、
どうもピンと来ない。

 

たしかに独自性はあるのだが、
他の製品、試作品に劣っている部分も多い。
やはり、世間で最高との評価を受けている製品がやはり最高の得点を得ているし、
我が研究所の試作品もなかなか良い。
しかし、SONAXの試作品には何か大きな可能性があるような気がして、
なお改良点を指摘し、試作を依頼してきた。
開発番号はすでにVP16まで来ている。
16回試作品を作ったという意味だ。

 

この過程は、実はものすごく大変なのだ。
そして、テストを繰り返すのもものすごく大変な作業である。

 

今回のテストは開発部の増田君が中心となってやってくれた。
何台もの社員の車が彼のテストの餌食となって
マスキングテープの跡だらけになっている。
私の車ももちろんそうだ。
ボンネットやトランク、ドアまでが色々なコーティングに塗り分けられ、
「僕が洗って結果を見ますので、それまでは洗わないで下さい。」
と、念を押されている。

 

増田君、彼自身の車も、
何度も何度も、違うコーティングを塗っては取り、塗っては取り、
本人だけがどうなっているかが分っていて、私たちにはさっぱり分らない。

 

彼の車は、もう10年以上前のセルシオ。40万円で鶴見部長から買ったものだ。
テストには彼の車が一番使われている。
自分の車でやるのが一番わかるのだそうだ。

 

 

製品開発者にとって、せっかく試作品を作っても、
まともなテストもせずに文句ばかり言われると嫌になってしまう。
逆に、本気でテストをして、
きちんと評価をし、真面目に改善要求を出されると、
開発に力が入るものだそうだ。
我が研究所の担当者もそう言っていた。

 

 

日本でのテストも来るところまで来て、
いよいよドイツに来て直接話し合い、
一緒にテストをしようと、やって来た私たちに対して、
Dr.ピッチは意気に感じてくれたのか、かなり開発を進めてくれたようだ。

 

やおら、出されたのが「VP20」と「VP23」
日本に届いていた最終版がVP16だったので、
一挙にVP17.18.19.20.21.22.23と7種類も試作して造ったようだ。
ひょっとしたら24.25・・もあったのかもしれない。
その中から20と23をピックアップして持って来てくれている。

 

早速使ってみる。
作業者は、アイ・タック技研を代表して専務が作業のすべてを行なう。
客観性についてアイ・タックでも最も信頼がおける一人だ。

 

まずVP20、意外に使いやすい。

 

しかし、ドイツは日本よりもはるかに涼しく、
多分、このときの温度は25度ぐらいであったであろう。
軽く30度以上になる日本を考えると、
この使い良さはかなり割り引いて考えなければならない。
「艶」も「傷の埋まり具合」も「発色」もぞくっとするほど良い。

 

次に日本から持ってきた最高の評価を得ている製品と、
我が研究所の最新作。
やはり両方ともかなりいい具合だ。
我が研究所の担当者が作った物も、グンと性能を上げてきているようだ。

 

最後に「VP23」
あっけないほどの作業性だ。拭き上げも何の抵抗も無い。
大変いい。
塗布効果も「VP20」に匹敵している。
「う~~~~ん。最高じゃん。これ」

 

使ったのが、
Dr.ピッチの自分の車。「アウディA6アバント」
2週間前に来たまだド新車である。
会社のリース車であるが、自分の専用車であり、そういう意味では自分の車なのだ。
「僕の車を使おう」と、何のためらいもなく出して来た。

 

この手のコーティングは新車に使われることが多いので、
新車でのテストは大切な要素なのだ。ありがたい。

 

ボンネットにマスキングテープを張り巡らし、何種類かのコーティング剤を塗り分ける。

 

 

彼は、マスキングテープははずすが、コーティングを塗り分けたまま、
ボンネットをオセロの碁盤の様にしたまま、
耐久テストをすると言う。
この辺の感覚は、うちの開発部の連中と同じである。

 

次に経年車
使った車は10年物のBMW
まったく問題ない。
集中する専務、体のしんどさは私と同じはずだ。

 

 

開発部の連中の熱心なテストと、
研究室の本気での対抗品の製作が、
ドイツの本気を喚起して、ひょっとしたら最高の物が開発出来たかもしれない。
ひょっとしたら。

 

まだこれから、時間を掛けて「艶の耐久性」「・・・・」などなど、
時間を掛けてテストをして、
もっともっと改良を進める事になるだろう。
しかし、第一段階と第二段階で目標の性能が達することが出来れば、
あとはステップを踏んでいけば、多分OKだろう。
油断するわけには行かないが、見通しは立った。

 

実にエキサイティングな3時間ほどであった。
とりあえず大満足である。

 

Dr.ピッチとベテラン開発スタッフ

 

 

ノイブルグはミュンヘンと同じように日本の北海道と同じ緯度にある。
夕方5時になってもまだ完全に明るい。
夏、空が暗くなるのは何と夜9時を過ぎてからなのだ。

 

テストが終わって、ノイブルグの象徴であるお城を見に行く事になった。

 

長い城壁に囲まれた城内は一つの街のようである。

 

 

市役所がお城の中にあるのだ。

 

 

Dr.ピッチは、この城内の中心にある王族のこのプライベート教会で、
この春、クラウディア嬢と結婚式を挙げたそうだ。信頼できる人である。

 

 

最悪の体調で迎えたこの日、
テストが始まると、まるで嘘のように集中できた。
実にエキサイティングな一日であった。

 

ちょっと照れてしかめっ面をしてみる。

 

Posted   パーマリンク

2005年07月31日(日曜日)

1225.一番辛かった頃

ニューヨークからオランダ・アムステルダムのスキポール空港に向けて
飛び立ったのは、午後11時半過ぎであった。
飛行時間は約7時間、時差は6時間である。

 

だから、アムステルダムに到着したのはお昼の12時半である。
この飛行では全く眠れなかった。

 

飛行時間が比較的短いし、夜の軽い食事をしていたら、
時差の関係と緯度が上がるせいもあって、
ちょっとパソコンをいじったり、
シートでモゾモゾとしていたら、
直に外が明るくなってきたのだ。
すべての窓がきっちり閉められて機内はほぼ真っ暗なのだが、
外が明るくなってきていることは何となく判る。
そうなると私は眠れなくなってしまうのだ。

 

ニューヨークで朝7時に起きてから
目的地スキポール空港に着いた時点で、すでに22時間半過ぎていた。
※この飛行機でアムステルダムにやって来ました。

 

 

スキポール空港からミュンヘンへ乗り継ぎ便に乗る。
この空港はターミナルビルが別れておらず、
一つの巨大なビルになっていて、
乗り継ぎ便はその一番端のFから反対の端Bまで歩かなくてはならない。
その距離2キロはあっただろうか(ちょっとオーバーか?)
と同時に、研究所の佐古さんとこの空港で待ち合わせをすることになっている。
その待ち合わせ時間が約3時間であり、
成田から飛んで来た佐古さんと会った時には、ホッとして疲れがドット出る。

 

それから乗り継ぎ便の時間までもう2時間半。
空港のプラスチックスの座り心地の悪い椅子で延々と待つ。

 

乗り継ぎ便が来た時点で、
もう連続28時間起きている。
アムステルダムからミュンヘンまで約1時間の飛行。
今度はミュンヘン空港でSONAXの吉村さんと合流し、
ドイツでのメンバー4人が揃った。

 

少ししたら、SONAX本社のDr.ピッチが迎えに来てくれた。
4人という人数と荷物が大きかろうということで、
奥さんのクラウディアさんと2台でのお出迎えだ。
お互いに再会を喜ぶ。
例のごとくアウトバーンを200km近くで飛ばし、
この日の目的地“ノイブルグ”に到着してからホテルにチェックイン。

 

Dr.ピッチご夫妻が、
私達をホームパーティーに呼んでくれた。
ホテルに入ってすぐにでもベッドに倒れ込みたかったところだが、
せっかくのご招待、お断りするわけには行かない。
この時点ですでに起きてから31時間が経っていた。
ニューヨークで歩き回ったのと、スキポール空港の端から端まで歩いたので
足が爆発寸前であったし、
長時間寝ていなかったことで、正直言って、この時は辛かった。

 

でも、Dr.ピッチご夫妻の暖かい歓迎と、
Mrs.クラウディアのとても美味しい料理と、
Dr.ピッチのお手製シュナップス(食後酒で40゜以上の強い酒・・密造酒??)
四年前の時と同じように大変楽しい時間を過ごしたあと、
ホテルの部屋に帰ったのが午後11時半。
必死にインターネットの接続を試みるが、どうしても接続できない。
早々に諦めて寝る事にする。
12時半を過ぎている。

 

この時点で、起きてから37時間半が経っている。
次の日はホテルを朝9時に出発だ。
いろいろな準備もあって朝7時には起きなくてはならない。

 

これを“時差の無い状態”で書くと、
朝7時に起きて、
丸一日遊んで、真夜中に飛行機の中で寝ようとしたが寝れず、
結局徹夜して、
ベットに入ったのが翌日の午後8時半、
そして、次の日の起床が6時半後の朝3時!となるわけだ。

 

これがキツクないわけがない。

 

次の日は、今回の一番重要な要件がある日だ。
まったく新しいタイプのコーティング剤開発の実験と検討の日。

 

この製品については、
それまで何度も何度も日本とドイツで試作とテストを繰り返し、
その報告と対策を、
私たちは日本語でメールし、
ドイツ語に翻訳してもらってDr.ピッチにメール。
それをピッチがドイツ語で回答し、それをまた日本語に翻訳してもらって、
それに対して私たちがまた日本語で反論を書く、
・・・という
実にまどろっこしく、かつ不正確な議論を繰り返してきた。
翻訳してくれる吉村さんが化学のことがほとんど解らないので、
どうもお互いの主張が正確に伝わっていないような気もしていた。

 

このままではどうしてもうまく行かず、
時間ばかりが経ってしまうような気がして、
「やっぱりドイツに行こう。
直接、車に施工しながら話をしなければ、いつまでたっても、ラチが明かない。」
そう決心してドイツ行きを実行したのだ。

 

ちょうどアメリカにも行かねばならない要件もあり、
それを一緒にして、珍なる世界一周出張と相成ったわけである。

 

その一番大切な日が、
体的に一番きつい日になってしまうのは、
スケジュール立てのミスであり、純粋に私のせいである。

 

とにかく何とか頑張らなくてはいけない。

 

・・・・・・
と、ここまで書いて、
今、31日の午前1時過ぎ、強烈に睡魔が襲ってきている。

無理をせずに寝る事にする。
時差と睡眠不足がまだ体の中に残っているのかもしれない。
(午前1時なら、眠くなるのは当たり前か?)

 

今回の出張のクライマックスは、
明日、起きてからまた書きます。

 

※Dr.ピッチとMrs.クラウディア
(この写真は次の日の食事の時に撮った写真です。当日は写真を失敗した。)

 

 

Mrs.クラウディアは、
婚約中にお会いした四年前よりも“少しだけ”大きくなっていた。
どうもデザートにハマっているらしい。
デザートを食べる時のクラウディアの目が怪しく光った。

 

 

Dr.ピッチは、海水のアクアリウムが趣味らしい。
海水のそれは造るのが非常に難しく、
また維持はもっと難しいので、滅多なことではうまく行かない。
(私も淡水のものを少しだけやった事がある。)

 

Dr.ピッチの御自宅にあったアクアリウムは、
私がこれまで見たことがないほど見事なもので、
たくさんのイソギンチャクとか、色々な珊瑚が見事に、かつ健康そうに生きていた。
これは何かのコンクールで優勝したこともあるそうだ。
うむむむっ、すごい!

 

Posted   パーマリンク

ページのトップへ ページのトップへ

  • 最近の記事

  • プロフィール

    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

  • カレンダー

    2005年7月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31  
  • リンク集

  • 過去の記事

  • RSS1.0

    [Login]

    (C) KeePer Giken. All rights reserved.